法律番号
法令本体
民法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十六年十二月一日
内閣総理大臣臨時代理
略
法律第百四十七号
民法の一部を改正する法律
民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
題名及び目次(明治三十一年法律第九号において付されたものを含む。)を削る。
次の題名及び目次を付する。
- 民法
- 目次
- 第一編総則
- 第一章通則(第一条・第二条)
- 第二章人
- 第一節権利能力(第三条)
- 第二節行為能力(第四条―第二十一条 )
- 第三節住所(第二十二条―第二十四条 )
- 第四節不在者の財産の管理及び失踪の宣告(第二十五条―第三十二条)
- 第五節同時死亡の推定(第三十二条の二)
- 第三章法人
- 第一節法人の設立(第三十三条―第五十一条)
- 第二節法人の管理(第五十二条―第六十七条)
- 第三節法人の解散(第六十八条―第八十三条)
- 第四節補則(第八十四条・第八十四条の二)
- 第五節罰則(第八十四条の三)
- 第四章物(第八十五条―第八十九条)
- 第五章法律行為
- 第一節総則(第九十条―第九十二条)
- 第二節意思表示(第九十三条―第九十八条の二)
- 第三節代理(第九十九条―第百十八条 )
- 第四節無効及び取消し(第百十九条―第百二十六条)
- 第五節条件及び期限(第百二十七条―第百三十七条)
- 第六章期間の計算(第百三十八条―第百四十三条)
- 第七章時効
- 第一節総則(第百四十四条―第百六十一条)
- 第二節取得時効(第百六十二条―第百六十五条)
- 第三節消滅時効(第百六十六条―第百七十四条の二)
- 第二編物権
- 第一章総則(第百七十五条―第百七十九条)
- 第二章占有権
- 第一節占有権の取得(第百八十条―第百八十七条)
- 第二節占有権の効力(第百八十八条―第二百二条)
- 第三節占有権の消滅(第二百三条・第二百四条)
- 第四節準占有(第二百五条)
- 第三章所有権
- 第一節所有権の限界
- 第一款所有権の内容及び範囲(第二百六条―第二百八条)
- 第二款相隣関係(第二百九条―第二百三十八条)
- 第二節所有権の取得(第二百三十九条―第二百四十八条)
- 第三節共有(第二百四十九条―第二百六十四条)
- 第四章地上権(第二百六十五条―第二百六十九条の二)
- 第五章永小作権(第二百七十条―第二百七十九条)
- 第六章地役権(第二百八十条―第二百九十四条)
- 第七章留置権(第二百九十五条―第三百二条)
- 第八章先取特権
- 第一節総則(第三百三条―第三百五条 )
- 第二節先取特権の種類
- 第一款一般の先取特権(第三百六条―第三百十条)
- 第二款動産の先取特権(第三百十一条―第三百二十四条)
- 第三款不動産の先取特権(第三百二十五条―第三百二十八条)
- 第三節先取特権の順位(第三百二十九条―第三百三十二条)
- 第四節先取特権の効力(第三百三十三条―第三百四十一条)
- 第九章質権
- 第一節総則(第三百四十二条―第三百五十一条)
- 第二節動産質(第三百五十二条―第三百五十五条)
- 第三節不動産質(第三百五十六条―第三百六十一条)
- 第四節権利質(第三百六十二条―第三百六十八条)
- 第十章抵当権
- 第一節総則(第三百六十九条―第三百七十二条)
- 第二節抵当権の効力(第三百七十三条―第三百九十五条)
- 第三節抵当権の消滅(第三百九十六条―第三百九十八条)
- 第四節根抵当(第三百九十八条の二―第三百九十八条の二十二)
- 第三編債権
- 第一章総則
- 第一節債権の目的(第三百九十九条―第四百十一条)
- 第二節債権の効力
- 第一款債務不履行の責任等(第四百十二条―第四百二十二条)
- 第二款債権者代位権及び詐害行為取消権(第四百二十三条―第四百二十六条)
- 第三節多数当事者の債権及び債務
- 第一款総則(第四百二十七条)
- 第二款不可分債権及び不可分債務(第四百二十八条―第四百三十一条)
- 第三款連帯債務(第四百三十二条―第四百四十五条)
- 第四款保証債務
- 第一目総則(第四百四十六条―第四百六十五条)
- 第二目貸金等根保証契約(第四百六十五条の二―第四百六十五条の五)
- 第四節債権の譲渡(第四百六十六条―第四百七十三条)
- 第五節債権の消滅
- 第一款弁済
- 第一目総則(第四百七十四条―第四百九十三条)
- 第二目弁済の目的物の供託(第四百九十四条―第四百九十八条)
- 第三目弁済による代位(第四百九十九条―第五百四条)
- 第二款相殺(第五百五条―第五百十二条)
- 第三款更改(第五百十三条―第五百十八条)
- 第四款免除(第五百十九条)
- 第五款混同(第五百二十条)
- 第二章契約
- 第一節総則
- 第一款契約の成立(第五百二十一条―第五百三十二条)
- 第二款契約の効力(第五百三十三条―第五百三十九条)
- 第三款契約の解除(第五百四十条―第五百四十八条)
- 第二節贈与(第五百四十九条―第五百五十四条)
- 第三節売買
- 第一款総則(第五百五十五条―第五百五十九条)
- 第二款売買の効力(第五百六十条―第五百七十八条)
- 第三款買戻し(第五百七十九条―第五百八十五条)
- 第四節交換(第五百八十六条)
- 第五節消費貸借(第五百八十七条―第五百九十二条)
- 第六節使用貸借(第五百九十三条―第六百条)
- 第七節賃貸借
- 第一款総則(第六百一条―第六百四条)
- 第二款賃貸借の効力(第六百五条―第六百十六条)
- 第三款賃貸借の終了(第六百十七条―第六百二十二条)
- 第八節雇用(第六百二十三条―第六百三十一条)
- 第九節請負(第六百三十二条―第六百四十二条)
- 第十節委任(第六百四十三条―第六百五十六条)
- 第十一節寄託(第六百五十七条―第六百六十六条)
- 第十二節組合(第六百六十七条―第六百八十八条)
- 第十三節終身定期金(第六百八十九条―第六百九十四条)
- 第十四節和解(第六百九十五条・第六百九十六条)
- 第三章事務管理(第六百九十七条―第七百二条)
- 第四章不当利得(第七百三条―第七百八条)
- 第五章不法行為(第七百九条―第七百二十四条)
- 第四編親族
- 第一章総則(第七百二十五条―第七百三十条)
- 第二章婚姻
- 第一節婚姻の成立
- 第一款婚姻の要件(第七百三十一条―第七百四十一条)
- 第二款婚姻の無効及び取消し(第七百四十二条―第七百四十九条)
- 第二節婚姻の効力(第七百五十条―第七百五十四条)
- 第三節夫婦財産制
- 第一款総則(第七百五十五条―第七百五十九条)
- 第二款法定財産制(第七百六十条―第七百六十二条)
- 第四節離婚
- 第一款協議上の離婚(第七百六十三条―第七百六十九条)
- 第二款裁判上の離婚(第七百七十条・第七百七十一条)
- 第三章親子
- 第一節実子(第七百七十二条―第七百九十一条)
- 第二節養子
- 第一款縁組の要件(第七百九十二条―第八百一条)
- 第二款縁組の無効及び取消し(第八百二条―第八百八条)
- 第三款縁組の効力(第八百九条・第八百十条)
- 第四款離縁(第八百十一条―第八百十七条)
- 第五款特別養子(第八百十七条の二―第八百十七条の十一)
- 第四章親権
- 第一節総則(第八百十八条・第八百十九条)
- 第二節親権の効力(第八百二十条―第八百三十三条)
- 第三節親権の喪失(第八百三十四条―第八百三十七条)
- 第五章後見
- 第一節後見の開始(第八百三十八条)
- 第二節後見の機関
- 第一款後見人(第八百三十九条―第八百四十七条)
- 第二款後見監督人(第八百四十八条―第八百五十二条)
- 第三節後見の事務(第八百五十三条―第八百六十九条)
- 第四節後見の終了(第八百七十条―第八百七十五条)
- 第六章保佐及び補助
- 第一節保佐(第八百七十六条―第八百七十六条の五)
- 第二節補助(第八百七十六条の六―第八百七十六条の十)
- 第七章扶養(第八百七十七条―第八百八十一条)
- 第五編相続
- 第一章総則(第八百八十二条―第八百八十五条)
- 第二章相続人(第八百八十六条―第八百九十五条)
- 第三章相続の効力
- 第一節総則(第八百九十六条―第八百九十九条)
- 第二節相続分(第九百条―第九百五条 )
- 第三節遺産の分割(第九百六条―第九百十四条)
- 第四章相続の承認及び放棄
- 第一節総則(第九百十五条―第九百十九条)
- 第二節相続の承認
- 第一款単純承認(第九百二十条・第九百二十一条)
- 第二款限定承認(第九百二十二条―第九百三十七条)
- 第三節相続の放棄
- 第五章財産分離(第九百四十一条―第九百五十条)
- 第六章相続人の不存在(第九百五十一条―第九百五十九条)
- 第七章遺言
- 第一節総則(第九百六十条―第九百六十六条)
- 第二節遺言の方式
- 第一款普通の方式(第九百六十七条―第九百七十五条)
- 第二款特別の方式(第九百七十六条―第九百八十四条)
- 第三節遺言の効力(第九百八十五条―第千三条)
- 第四節遺言の執行(第千四条―第千二十一条)
- 第五節遺言の撤回及び取消し(第千二十二条―第千二十七条)
- 第八章遺留分(第千二十八条―第千四十四条)
- 附則
第一編から第三編までを次のように改める。
第一編総則
第一章通則
- 基本原則
- 第一条私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
- 2権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
- 3権利の濫用は、これを許さない。
- 解釈の基準
- 第二条この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。
第二章人
第一節権利能力
- 第三条私権の享有は、出生に始まる。
- 2外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
第二節行為能力
- 成年
- 第四条年齢二十歳をもって、成年とする。
- 未成年者の法律行為
- 第五条未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
- 2前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
- 3第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
- 未成年者の営業の許可
- 第六条一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
- 2前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
- 後見開始の審判
- 第七条精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
- 成年被後見人及び成年後見人
- 第八条後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
- 成年被後見人の法律行為
- 第九条成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
- 後見開始の審判の取消し
- 第十条第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
- 保佐開始の審判
- 第十一条精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
- 被保佐人及び保佐人
- 第十二条保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
- 保佐人の同意を要する行為等
- 第十三条被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
- 一元本を領収し、又は利用すること。
- 二借財又は保証をすること。
- 三不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
- 四訴訟行為をすること。
- 五贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
- 六相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
- 七贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
- 八新築、改築、増築又は大修繕をすること。
- 九第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
- 2家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
- 3保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
- 4保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
- 保佐開始の審判等の取消し
- 第十四条第十一条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
- 2家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
- 補助開始の審判
- 第十五条精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
- 2本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
- 3補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
- 被補助人及び補助人
- 第十六条補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
- 補助人の同意を要する旨の審判等
- 第十七条家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
- 2本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
- 3補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
- 4補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
- 補助開始の審判等の取消し
- 第十八条第十五条第一項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
- 2家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
- 3前条第一項の審判及び第八百七十六条の九第一項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。
- 審判相互の関係
- 第十九条後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。
- 2前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
- 制限行為能力者の相手方の催告権
- 第二十条制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
- 2制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
- 3特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
- 4制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
- 制限行為能力者の詐術
- 第二十一条制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
第三節住所
- 住所
- 第二十二条各人の生活の本拠をその者の住所とする。
- 居所
- 第二十三条住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。
- 2日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、法例(明治三十一年法律第十号)その他準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。
- 仮住所
- 第二十四条ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。
第四節不在者の財産の管理及び失踪の宣告
- 不在者の財産の管理
- 第二十五条従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
- 2前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
- 管理人の改任
- 第二十六条不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。
- 管理人の職務
- 第二十七条前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
- 2不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
- 3前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
- 管理人の権限
- 第二十八条管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
- 管理人の担保提供及び報酬
- 第二十九条家庭裁判所は、管理人に財産の管理及び返還について相当の担保を立てさせることができる。
- 2家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる。
- 失踪の宣告
- 第三十条不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
- 2戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
- 失踪の宣告の効力
- 第三十一条前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
- 失踪の宣告の取消し
- 第三十二条失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
- 2失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
第五節同時死亡の推定
- 第三十二条の二数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
第三章法人
第一節法人の設立
- 法人の成立
- 第三十三条法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
- 公益法人の設立
- 第三十四条学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。
- 名称の使用制限
- 第三十五条社団法人又は財団法人でない者は、その名称中に社団法人若しくは財団法人という文字又はこれらと誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
- 外国法人
- 第三十六条外国法人は、国、国の行政区画及び商事会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。
- 2前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。
- 定款
- 第三十七条社団法人を設立しようとする者は、定款を作成し、次に掲げる事項を記載しなければならない。
- 一目的
- 二名称
- 三事務所の所在地
- 四資産に関する規定
- 五理事の任免に関する規定
- 六社員の資格の得喪に関する規定
- 定款の変更
- 第三十八条定款は、総社員の四分の三以上の同意があるときに限り、変更することができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 2定款の変更は、主務官庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。
- 寄附行為
- 第三十九条財団法人を設立しようとする者は、その設立を目的とする寄附行為で、第三十七条第一号から第五号までに掲げる事項を定めなければならない。
- 裁判所による名称等の定め
- 第四十条財団法人を設立しようとする者が、その名称、事務所の所在地又は理事の任免の方法を定めないで死亡したときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、これを定めなければならない。
- 贈与又は遺贈に関する規定の準用
- 第四十一条生前の処分で寄附行為をするときは、その性質に反しない限り、贈与に関する規定を準用する。
- 2遺言で寄附行為をするときは、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
- 寄附財産の帰属時期
- 第四十二条生前の処分で寄附行為をしたときは、寄附財産は、法人の設立の許可があった時から法人に帰属する。
- 2遺言で寄附行為をしたときは、寄附財産は、遺言が効力を生じた時から法人に帰属したものとみなす。
- 法人の能力
- 第四十三条法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
- 法人の不法行為能力等
- 第四十四条法人は、理事その他の代理人がその職務を行うについて他人に加えた損害を賠償する責任を負う。
- 2法人の目的の範囲を超える行為によって他人に損害を加えたときは、その行為に係る事項の決議に賛成した社員及び理事並びにその決議を履行した理事その他の代理人は、連帯してその損害を賠償する責任を負う。
- 法人の設立の登記等
- 第四十五条法人は、その設立の日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、登記をしなければならない。
- 2法人の設立は、その主たる事務所の所在地において登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
- 3法人の設立後に新たに事務所を設けたときは、その事務所の所在地においては三週間以内に、登記をしなければならない。
- 設立の登記の登記事項及び変更の登記等
- 第四十六条法人の設立の登記において登記すべき事項は、次のとおりとする。
- 一目的
- 二名称
- 三事務所の所在地
- 四設立の許可の年月日
- 五存立時期を定めたときは、その時期
- 六資産の総額
- 七出資の方法を定めたときは、その方法
- 八理事の氏名及び住所
- 2前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、それぞれ登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。
- 3理事の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分又はその仮処分の変更若しくは取消しがあったときは、主たる事務所及びその他の事務所の所在地においてその登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
- 登記の期間の計算
- 第四十七条第四十五条第一項及び前条の規定により登記すべき事項であって、官庁の許可を要するものは、その許可書が到達した時から登記の期間を起算する。
- 事務所の移転の登記
- 第四十八条法人が主たる事務所を移転したときは、二週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては第四十六条第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
- 2法人が主たる事務所以外の事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第四十六条第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
- 3同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。
- 外国法人の登記
- 第四十九条第四十五条第三項、第四十六条及び前条の規定は、外国法人が日本に事務所を設ける場合について準用する。ただし、外国において生じた事項については、その通知が到達した時から登記の期間を起算する。
- 2外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。
- 法人の住所
- 第五十条法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。
- 財産目録及び社員名簿
- 第五十一条法人は、設立の時及び毎年一月から三月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時及び毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
- 2社団法人は、社員名簿を備え置き、社員の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。
第二節法人の管理
- 理事
- 第五十二条法人には、一人又は数人の理事を置かなければならない。
- 2理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。
- 法人の代表
- 第五十三条理事は、法人のすべての事務について、法人を代表する。ただし、定款の規定又は寄附行為の趣旨に反することはできず、また、社団法人にあっては総会の決議に従わなければならない。
- 理事の代理権の制限
- 第五十四条理事の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
- 理事の代理行為の委任
- 第五十五条理事は、定款、寄附行為又は総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。
- 仮理事
- 第五十六条理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。
- 利益相反行為
- 第五十七条法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代理権を有しない。この場合においては、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、特別代理人を選任しなければならない。
- 監事
- 第五十八条法人には、定款、寄附行為又は総会の決議で、一人又は数人の監事を置くことができる。
- 監事の職務
- 第五十九条監事の職務は、次のとおりとする。
- 一法人の財産の状況を監査すること。
- 二理事の業務の執行の状況を監査すること。
- 三財産の状況又は業務の執行について、法令、定款若しくは寄附行為に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、総会又は主務官庁に報告をすること。
- 四前号の報告をするため必要があるときは、総会を招集すること。
- 通常総会
- 第六十条社団法人の理事は、少なくとも毎年一回、社員の通常総会を開かなければならない。
- 臨時総会
- 第六十一条社団法人の理事は、必要があると認めるときは、いつでも臨時総会を招集することができる。
- 2総社員の五分の一以上から会議の目的である事項を示して請求があったときは、理事は、臨時総会を招集しなければならない。ただし、総社員の五分の一の割合については、定款でこれと異なる割合を定めることができる。
- 総会の招集
- 第六十二条総会の招集の通知は、会日より少なくとも五日前に、その会議の目的である事項を示し、定款で定めた方法に従ってしなければならない。
- 社団法人の事務の執行
- 第六十三条社団法人の事務は、定款で理事その他の役員に委任したものを除き、すべて総会の決議によって行う。
- 総会の決議事項
- 第六十四条総会においては、第六十二条の規定によりあらかじめ通知をした事項についてのみ、決議をすることができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 社員の表決権
- 第六十五条各社員の表決権は、平等とする。
- 2総会に出席しない社員は、書面で、又は代理人によって表決をすることができる。
- 3前二項の規定は、定款に別段の定めがある場合には、適用しない。
- 表決権のない場合
- 第六十六条社団法人と特定の社員との関係について議決をする場合には、その社員は、表決権を有しない。
- 法人の業務の監督
- 第六十七条法人の業務は、主務官庁の監督に属する。
- 2主務官庁は、法人に対し、監督上必要な命令をすることができる。
- 3主務官庁は、職権で、いつでも法人の業務及び財産の状況を検査することができる。
第三節法人の解散
- 法人の解散事由
- 第六十八条法人は、次に掲げる事由によって解散する。
- 一定款又は寄附行為で定めた解散事由の発生
- 二法人の目的である事業の成功又はその成功の不能
- 三破産手続開始の決定
- 四設立の許可の取消し
- 2社団法人は、前項各号に掲げる事由のほか、次に掲げる事由によって解散する。
- 一総会の決議
- 二社員が欠けたこと。
- 法人の解散の決議
- 第六十九条社団法人は、総社員の四分の三以上の賛成がなければ、解散の決議をすることができない。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 法人についての破産手続の開始
- 第七十条法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合には、裁判所は、理事若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。
- 2前項に規定する場合には、理事は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
- 法人の設立の許可の取消し
- 第七十一条法人がその目的以外の事業をし、又は設立の許可を得た条件若しくは主務官庁の監督上の命令に違反し、その他公益を害すべき行為をした場合において、他の方法により監督の目的を達することができないときは、主務官庁は、その許可を取り消すことができる。正当な事由なく引き続き三年以上事業をしないときも、同様とする。
- 残余財産の帰属
- 第七十二条解散した法人の財産は、定款又は寄附行為で指定した者に帰属する。
- 2定款又は寄附行為で権利の帰属すべき者を指定せず、又はその者を指定する方法を定めなかったときは、理事は、主務官庁の許可を得て、その法人の目的に類似する目的のために、その財産を処分することができる。ただし、社団法人にあっては、総会の決議を経なければならない。
- 3前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。
- 清算法人
- 第七十三条解散した法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなす。
- 清算人
- 第七十四条法人が解散したときは、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となる。ただし、定款若しくは寄附行為に別段の定めがあるとき、又は総会において理事以外の者を選任したときは、この限りでない。
- 裁判所による清算人の選任
- 第七十五条前条の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。
- 清算人の解任
- 第七十六条重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。
- 清算人及び解散の登記及び届出
- 第七十七条清算人は、破産手続開始の決定及び設立の許可の取消しの場合を除き、解散後主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、その氏名及び住所並びに解散の原因及び年月日の登記をし、かつ、これらの事項を主務官庁に届け出なければならない。
- 2清算中に就職した清算人は、就職後主たる事務所の所在地においては二週間以内に、その他の事務所の所在地においては三週間以内に、その氏名及び住所の登記をし、かつ、これらの事項を主務官庁に届け出なければならない。
- 3前項の規定は、設立の許可の取消しによる解散の際に就職した清算人について準用する。
- 清算人の職務及び権限
- 第七十八条清算人の職務は、次のとおりとする。
- 一現務の結了
- 二債権の取立て及び債務の弁済
- 三残余財産の引渡し
- 2清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
- 債権の申出の催告等
- 第七十九条清算人は、その就職の日から二箇月以内に、少なくとも三回の公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
- 2前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは、その債権は清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、知れている債権者を除斥することができない。
- 3清算人は、知れている債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。
- 期間経過後の債権の申出
- 第八十条前条第一項の期間の経過後に申出をした債権者は、法人の債務が完済された後まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができる。
- 清算法人についての破産手続の開始
- 第八十一条清算中に法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。
- 2清算人は、清算中の法人が破産手続開始の決定を受けた場合において、破産管財人にその事務を引き継いだときは、その任務を終了したものとする。
- 3前項に規定する場合において、清算中の法人が既に債権者に支払い、又は権利の帰属すべき者に引き渡したものがあるときは、破産管財人は、これを取り戻すことができる。
- 裁判所による監督
- 第八十二条法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属する。
- 2裁判所は、職権で、いつでも前項の監督に必要な検査をすることができる。
- 清算結了の届出
- 第八十三条清算が結了したときは、清算人は、その旨を主務官庁に届け出なければならない。
第四節補則
- 主務官庁の権限の委任
- 第八十四条この章に規定する主務官庁の権限は、政令で定めるところにより、その全部又は一部を国に所属する行政庁に委任することができる。
- 都道府県の執行機関による主務官庁の事務の処理
- 第八十四条の二この章に規定する主務官庁の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、都道府県の知事その他の執行機関(以下「都道府県の執行機関」という。)においてその全部又は一部を処理することとすることができる。
- 2前項の場合において、主務官庁は、政令で定めるところにより、法人に対する監督上の命令又は設立の許可の取消しについて、都道府県の執行機関に対し指示をすることができる。
- 3第一項の場合において、主務官庁は、都道府県の執行機関がその事務を処理するに当たってよるべき基準を定めることができる。
- 4主務官庁が前項の基準を定めたときは、これを告示しなければならない。
第五節罰則
- 第八十四条の三法人の理事、監事又は清算人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、五十万円以下の過料に処する。
- 一この章に規定する登記を怠ったとき。
- 二第五十一条の規定に違反し、又は財産目録若しくは社員名簿に不正の記載をしたとき。
- 三第六十七条第三項又は第八十二条第二項の規定による主務官庁、その権限の委任を受けた国に所属する行政庁若しくはその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関又は裁判所の検査を妨げたとき。
- 四第六十七条第二項の規定による主務官庁又はその権限の委任を受けた国に所属する行政庁若しくはその権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関の監督上の命令に違反したとき。
- 五官庁、主務官庁の権限に属する事務を処理する都道府県の執行機関又は総会に対し、不実の申立てをし、又は事実を隠ぺいしたとき。
- 六第七十条第二項又は第八十一条第一項の規定による破産手続開始の申立てを怠ったとき。
- 七第七十九条第一項又は第八十一条第一項の公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
- 2第三十五条の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。
第四章物
- 定義
- 第八十五条この法律において「物」とは、有体物をいう。
- 不動産及び動産
- 第八十六条土地及びその定着物は、不動産とする。
- 2不動産以外の物は、すべて動産とする。
- 3無記名債権は、動産とみなす。
- 主物及び従物
- 第八十七条物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。
- 2従物は、主物の処分に従う。
- 天然果実及び法定果実
- 第八十八条物の用法に従い収取する産出物を天然果実とする。
- 2物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物を法定果実とする。
- 果実の帰属
- 第八十九条天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
- 2法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。
第五章法律行為
第一節総則
- 公序良俗
- 第九十条公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
- 任意規定と異なる意思表示
- 第九十一条法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
- 任意規定と異なる慣習
- 第九十二条法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
第二節意思表示
- 心裡留保
- 第九十三条意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
- 虚偽表示
- 第九十四条相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
- 2前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
- 錯誤
- 第九十五条意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
- 詐欺又は強迫
- 第九十六条詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
- 2相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
- 3前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
- 隔地者に対する意思表示
- 第九十七条隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
- 2隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
- 公示による意思表示
- 第九十八条意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。
- 2前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。
- 3公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。
- 4公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。
- 5裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。
- 意思表示の受領能力
- 第九十八条の二意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
第三節代理
- 代理行為の要件及び効果
- 第九十九条代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
- 2前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
- 本人のためにすることを示さない意思表示
- 第百条代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
- 代理行為の瑕疵
- 第百一条意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
- 2特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
- 代理人の行為能力
- 第百二条代理人は、行為能力者であることを要しない。
- 権限の定めのない代理人の権限
- 第百三条権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
- 一保存行為
- 二代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
- 任意代理人による復代理人の選任
- 第百四条委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
- 復代理人を選任した代理人の責任
- 第百五条代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
- 2代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。
- 法定代理人による復代理人の選任
- 第百六条法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。
- 復代理人の権限等
- 第百七条復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
- 2復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
- 自己契約及び双方代理
- 第百八条同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
- 代理権授与の表示による表見代理
- 第百九条第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
- 権限外の行為の表見代理
- 第百十条前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
- 代理権の消滅事由
- 第百十一条代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
- 一本人の死亡
- 二代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
- 2委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。
- 代理権消滅後の表見代理
- 第百十二条代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
- 無権代理
- 第百十三条代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
- 2追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
- 無権代理の相手方の催告権
- 第百十四条前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
- 無権代理の相手方の取消権
- 第百十五条代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
- 無権代理行為の追認
- 第百十六条追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
- 無権代理人の責任
- 第百十七条他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
- 2前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。
- 単独行為の無権代理
- 第百十八条単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。
第四節無効及び取消し
- 無効な行為の追認
- 第百十九条無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
- 取消権者
- 第百二十条行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
- 2詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
- 取消しの効果
- 第百二十一条取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
- 取り消すことができる行為の追認
- 第百二十二条取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。
- 取消し及び追認の方法
- 第百二十三条取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
- 追認の要件
- 第百二十四条追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
- 2成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
- 3前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。
- 法定追認
- 第百二十五条前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
- 一全部又は一部の履行
- 二履行の請求
- 三更改
- 四担保の供与
- 五取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
- 六強制執行
- 取消権の期間の制限
- 第百二十六条取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
第五節条件及び期限
- 条件が成就した場合の効果
- 第百二十七条停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
- 2解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
- 3当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
- 条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止
- 第百二十八条条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
- 条件の成否未定の間における権利の処分等
- 第百二十九条条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。
- 条件の成就の妨害
- 第百三十条条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
- 既成条件
- 第百三十一条条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
- 2条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
- 3前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。
- 不法条件
- 第百三十二条不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。
- 不能条件
- 第百三十三条不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。
- 2不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。
- 随意条件
- 第百三十四条停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。
- 期限の到来の効果
- 第百三十五条法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
- 2法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。
- 期限の利益及びその放棄
- 第百三十六条期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
- 2期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
- 期限の利益の喪失
- 第百三十七条次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
- 一債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
- 二債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
- 三債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
第六章期間の計算
- 期間の計算の通則
- 第百三十八条期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
期間の起算
- 第百三十九条時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
- 第百四十条日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
期間の満了
- 第百四十一条前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
- 第百四十二条期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
- 暦による期間の計算
- 第百四十三条週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
- 2週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
第七章時効
第一節総則
- 時効の効力
- 第百四十四条時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
- 時効の援用
- 第百四十五条時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
- 時効の利益の放棄
- 第百四十六条時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
- 時効の中断事由
- 第百四十七条時効は、次に掲げる事由によって中断する。
- 一請求
- 二差押え、仮差押え又は仮処分
- 三承認
- 時効の中断の効力が及ぶ者の範囲
- 第百四十八条前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
- 裁判上の請求
- 第百四十九条裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
- 支払督促
- 第百五十条支払督促は、債権者が民事訴訟法第三百九十二条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
- 和解及び調停の申立て
- 第百五十一条和解の申立て又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
- 破産手続参加等
- 第百五十二条破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。
- 催告
- 第百五十三条催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
差押え、仮差押え及び仮処分
- 第百五十四条差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。
- 第百五十五条差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。
- 承認
- 第百五十六条時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。
- 中断後の時効の進行
- 第百五十七条中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
- 2裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。
- 未成年者又は成年被後見人と時効の停止
- 第百五十八条時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
- 2未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
- 夫婦間の権利の時効の停止
- 第百五十九条夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
- 相続財産に関する時効の停止
- 第百六十条相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
- 天災等による時効の停止
- 第百六十一条時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
第二節取得時効
- 所有権の取得時効
- 第百六十二条二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
- 2十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
- 所有権以外の財産権の取得時効
- 第百六十三条所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。
占有の中止等による取得時効の中断
- 第百六十四条第百六十二条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。
- 第百六十五条前条の規定は、第百六十三条の場合について準用する。
第三節消滅時効
- 消滅時効の進行等
- 第百六十六条消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
- 2前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
- 債権等の消滅時効
- 第百六十七条債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
- 2債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。
- 定期金債権の消滅時効
- 第百六十八条定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。
- 2定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。
- 定期給付債権の短期消滅時効
- 第百六十九条年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
三年の短期消滅時効
- 第百七十条次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。
- 一医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
- 二工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
- 第百七十一条弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。
二年の短期消滅時効
- 第百七十二条弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。
- 2前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。
- 第百七十三条次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
- 一生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
- 二自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
- 三学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権
- 一年の短期消滅時効
- 第百七十四条次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
- 一月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
- 二自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
- 三運送賃に係る債権
- 四旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
- 五動産の損料に係る債権
- 判決で確定した権利の消滅時効
- 第百七十四条の二確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
- 2前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
第二編物権
第一章総則
- 物権の創設
- 第百七十五条物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。
- 物権の設定及び移転
- 第百七十六条物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
- 不動産に関する物権の変動の対抗要件
- 第百七十七条不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
- 動産に関する物権の譲渡の対抗要件
- 第百七十八条動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
- 混同
- 第百七十九条同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
- 2所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
- 3前二項の規定は、占有権については、適用しない。
第二章占有権
第一節占有権の取得
- 占有権の取得
- 第百八十条占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
- 代理占有
- 第百八十一条占有権は、代理人によって取得することができる。
- 現実の引渡し及び簡易の引渡し
- 第百八十二条占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。
- 2譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
- 占有改定
- 第百八十三条代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
- 指図による占有移転
- 第百八十四条代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
- 占有の性質の変更
- 第百八十五条権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
- 占有の態様等に関する推定
- 第百八十六条占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
- 2前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
- 占有の承継
- 第百八十七条占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
- 2前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
第二節占有権の効力
- 占有物について行使する権利の適法の推定
- 第百八十八条占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
- 善意の占有者による果実の取得等
- 第百八十九条善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
- 2善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
- 悪意の占有者による果実の返還等
- 第百九十条悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
- 2前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
- 占有者による損害賠償
- 第百九十一条占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
- 即時取得
- 第百九十二条取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
盗品又は遺失物の回復
- 第百九十三条前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
- 第百九十四条占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
- 動物の占有による権利の取得
- 第百九十五条家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。
- 占有者による費用の償還請求
- 第百九十六条占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
- 2占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
- 占有の訴え
- 第百九十七条占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
- 占有保持の訴え
- 第百九十八条占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
- 占有保全の訴え
- 第百九十九条占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。
- 占有回収の訴え
- 第二百条占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
- 2占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
- 占有の訴えの提起期間
- 第二百一条占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
- 2占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
- 3占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
- 本権の訴えとの関係
- 第二百二条占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
- 2占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
第三節占有権の消滅
- 占有権の消滅事由
- 第二百三条占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。
- 代理占有権の消滅事由
- 第二百四条代理人によって占有をする場合には、占有権は、次に掲げる事由によって消滅する。
- 一本人が代理人に占有をさせる意思を放棄したこと。
- 二代理人が本人に対して以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示したこと。
- 三代理人が占有物の所持を失ったこと。
- 2占有権は、代理権の消滅のみによっては、消滅しない。
第四節準占有
- 第二百五条この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。
第三章所有権
第一節所有権の限界
第一款所有権の内容及び範囲
- 所有権の内容
- 第二百六条所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
- 土地所有権の範囲
- 第二百七条土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
- 第二百八条削除
第二款相隣関係
- 隣地の使用請求
- 第二百九条土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
- 2前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
公道に至るための他の土地の通行権
- 第二百十条他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
- 2池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
- 第二百十一条前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
- 2前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
- 第二百十二条第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。
- 第二百十三条分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
- 2前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
- 自然水流に対する妨害の禁止
- 第二百十四条土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
- 水流の障害の除去
- 第二百十五条水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる。
- 水流に関する工作物の修繕等
- 第二百十六条他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。
- 費用の負担についての慣習
- 第二百十七条前二条の場合において、費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う。
- 雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止
- 第二百十八条土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
- 水流の変更
- 第二百十九条溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。
- 2両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。
- 3前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
- 排水のための低地の通水
- 第二百二十条高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。
- 通水用工作物の使用
- 第二百二十一条土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。
- 2前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
- 堰の設置及び使用
- 第二百二十二条水流地の所有者は、堰を設ける必要がある場合には、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、その堰を対岸に付着させて設けることができる。ただし、これによって生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
- 2対岸の土地の所有者は、水流地の一部がその所有に属するときは、前項の堰を使用することができる。
- 3前条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
- 境界標の設置
- 第二百二十三条土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
- 境界標の設置及び保存の費用
- 第二百二十四条境界標の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。ただし、測量の費用は、その土地の広狭に応じて分担する。
- 囲障の設置
- 第二百二十五条二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
- 2当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。
- 囲障の設置及び保存の費用
- 第二百二十六条前条の囲障の設置及び保存の費用は、相隣者が等しい割合で負担する。
- 相隣者の一人による囲障の設置
- 第二百二十七条相隣者の一人は、第二百二十五条第二項に規定する材料より良好なものを用い、又は同項に規定する高さを増して囲障を設けることができる。ただし、これによって生ずる費用の増加額を負担しなければならない。
- 囲障の設置等に関する慣習
- 第二百二十八条前三条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
境界標等の共有の推定
- 第二百二十九条境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。
- 第二百三十条一棟の建物の一部を構成する境界線上の障壁については、前条の規定は、適用しない。
- 2高さの異なる二棟の隣接する建物を隔てる障壁の高さが、低い建物の高さを超えるときは、その障壁のうち低い建物を超える部分についても、前項と同様とする。ただし、防火障壁については、この限りでない。
共有の障壁の高さを増す工事
- 第二百三十一条相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。
- 2前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。
- 第二百三十二条前条の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
- 竹木の枝の切除及び根の切取り
- 第二百三十三条隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
- 2隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
境界線付近の建築の制限
- 第二百三十四条建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
- 2前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
- 第二百三十五条境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
- 2前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
- 境界線付近の建築に関する慣習
- 第二百三十六条前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
- 境界線付近の掘削の制限
- 第二百三十七条井戸、用水だめ、下水だめ又は肥料だめを掘るには境界線から二メートル以上、池、穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から一メートル以上の距離を保たなければならない。
- 2導水管を埋め、又は溝若しくは堀を掘るには、境界線からその深さの二分の一以上の距離を保たなければならない。ただし、一メートルを超えることを要しない。
- 境界線付近の掘削に関する注意義務
- 第二百三十八条境界線の付近において前条の工事をするときは、土砂の崩壊又は水若しくは汚液の漏出を防ぐため必要な注意をしなければならない。
第二節所有権の取得
- 無主物の帰属
- 第二百三十九条所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
- 2所有者のない不動産は、国庫に帰属する。
- 遺失物の拾得
- 第二百四十条遺失物は、遺失物法(明治三十二年法律第八十七号)の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
- 埋蔵物の発見
- 第二百四十一条埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
- 不動産の付合
- 第二百四十二条不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
動産の付合
- 第二百四十三条所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
- 第二百四十四条付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
- 混和
- 第二百四十五条前二条の規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する。
- 加工
- 第二百四十六条他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
- 2前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。
- 付合、混和又は加工の効果
- 第二百四十七条第二百四十二条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
- 2前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。
- 付合、混和又は加工に伴う償金の請求
- 第二百四十八条第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。
第三節共有
- 共有物の使用
- 第二百四十九条各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
- 共有持分の割合の推定
- 第二百五十条各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
- 共有物の変更
- 第二百五十一条各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
- 共有物の管理
- 第二百五十二条共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
- 共有物に関する負担
- 第二百五十三条各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
- 2共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
- 共有物についての債権
- 第二百五十四条共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
- 持分の放棄及び共有者の死亡
- 第二百五十五条共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
共有物の分割請求
- 第二百五十六条各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
- 2前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
- 第二百五十七条前条の規定は、第二百二十九条に規定する共有物については、適用しない。
- 裁判による共有物の分割
- 第二百五十八条共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
- 2前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
- 共有に関する債権の弁済
- 第二百五十九条共有者の一人が他の共有者に対して共有に関する債権を有するときは、分割に際し、債務者に帰属すべき共有物の部分をもって、その弁済に充てることができる。
- 2債権者は、前項の弁済を受けるため債務者に帰属すべき共有物の部分を売却する必要があるときは、その売却を請求することができる。
- 共有物の分割への参加
- 第二百六十条共有物について権利を有する者及び各共有者の債権者は、自己の費用で、分割に参加することができる。
- 2前項の規定による参加の請求があったにもかかわらず、その請求をした者を参加させないで分割をしたときは、その分割は、その請求をした者に対抗することができない。
- 分割における共有者の担保責任
- 第二百六十一条各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。
- 共有物に関する証書
- 第二百六十二条分割が完了したときは、各分割者は、その取得した物に関する証書を保存しなければならない。
- 2共有者の全員又はそのうちの数人に分割した物に関する証書は、その物の最大の部分を取得した者が保存しなければならない。
- 3前項の場合において、最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で証書の保存者を定める。協議が調わないときは、裁判所が、これを指定する。
- 4証書の保存者は、他の分割者の請求に応じて、その証書を使用させなければならない。
- 共有の性質を有する入会権
- 第二百六十三条共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。
- 準共有
- 第二百六十四条この節の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。
第四章地上権
- 地上権の内容
- 第二百六十五条地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
- 地代
- 第二百六十六条第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。
- 2地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
- 相隣関係の規定の準用
- 第二百六十七条前章第一節第二款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。ただし、第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。
- 地上権の存続期間
- 第二百六十八条設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは、一年前に予告をし、又は期限の到来していない一年分の地代を支払わなければならない。
- 2地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、二十年以上五十年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。
- 工作物等の収去等
- 第二百六十九条地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる。ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。
- 2前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
- 地下又は空間を目的とする地上権
- 第二百六十九条の二地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
- 2前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。
第五章永小作権
- 永小作権の内容
- 第二百七十条永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
- 永小作人による土地の変更の制限
- 第二百七十一条永小作人は、土地に対して、回復することのできない損害を生ずべき変更を加えることができない。
- 永小作権の譲渡又は土地の賃貸
- 第二百七十二条永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。
- 賃貸借に関する規定の準用
- 第二百七十三条永小作人の義務については、この章の規定及び設定行為で定めるもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
- 小作料の減免
- 第二百七十四条永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。
- 永小作権の放棄
- 第二百七十五条永小作人は、不可抗力によって、引き続き三年以上全く収益を得ず、又は五年以上小作料より少ない収益を得たときは、その権利を放棄することができる。
- 永小作権の消滅請求
- 第二百七十六条永小作人が引き続き二年以上小作料の支払を怠ったときは、土地の所有者は、永小作権の消滅を請求することができる。
- 永小作権に関する慣習
- 第二百七十七条第二百七十一条から前条までの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
- 永小作権の存続期間
- 第二百七十八条永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
- 2永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
- 3設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、三十年とする。
- 工作物等の収去等
- 第二百七十九条第二百六十九条の規定は、永小作権について準用する。
第六章地役権
- 地役権の内容
- 第二百八十条地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
- 地役権の付従性
- 第二百八十一条地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 2地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
- 地役権の不可分性
- 第二百八十二条土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない。
- 2土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権は、その各部のために又はその各部について存する。ただし、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでない。
地役権の時効取得
- 第二百八十三条地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
- 第二百八十四条土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。
- 2共有者に対する時効の中断は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。
- 3地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の停止の原因があっても、時効は、各共有者のために進行する。
- 用水地役権
- 第二百八十五条用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 2同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。
承役地の所有者の工作物の設置義務等
- 第二百八十六条設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。
- 第二百八十七条承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより前条の義務を免れることができる。
- 承役地の所有者の工作物の使用
- 第二百八十八条承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用することができる。
- 2前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
承役地の時効取得による地役権の消滅
- 第二百八十九条承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。
- 第二百九十条前条の規定による地役権の消滅時効は、地役権者がその権利を行使することによって中断する。
地役権の消滅時効
- 第二百九十一条第百六十七条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。
- 第二百九十二条要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の中断又は停止があるときは、その中断又は停止は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。
- 第二百九十三条地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。
- 共有の性質を有しない入会権
- 第二百九十四条共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。
第七章留置権
- 留置権の内容
- 第二百九十五条他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
- 2前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
- 留置権の不可分性
- 第二百九十六条留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。
- 留置権者による果実の収取
- 第二百九十七条留置権者は、留置物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当することができる。
- 2前項の果実は、まず債権の利息に充当し、なお残余があるときは元本に充当しなければならない。
- 留置権者による留置物の保管等
- 第二百九十八条留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
- 2留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。
- 3留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。
- 留置権者による費用の償還請求
- 第二百九十九条留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
- 2留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
- 留置権の行使と債権の消滅時効
- 第三百条留置権の行使は、債権の消滅時効の進行を妨げない。
- 担保の供与による留置権の消滅
- 第三百一条債務者は、相当の担保を供して、留置権の消滅を請求することができる。
- 占有の喪失による留置権の消滅
- 第三百二条留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
第八章先取特権
第一節総則
- 先取特権の内容
- 第三百三条先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 物上代位
- 第三百四条先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
- 2債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
- 先取特権の不可分性
- 第三百五条第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。
第二節先取特権の種類
第一款一般の先取特権
- 一般の先取特権
- 第三百六条次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
- 一共益の費用
- 二雇用関係
- 三葬式の費用
- 四日用品の供給
- 共益費用の先取特権
- 第三百七条共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
- 2前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。
- 雇用関係の先取特権
- 第三百八条雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。
- 葬式費用の先取特権
- 第三百九条葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。
- 2前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。
- 日用品供給の先取特権
- 第三百十条日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の六箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。
第二款動産の先取特権
- 動産の先取特権
- 第三百十一条次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
- 一不動産の賃貸借
- 二旅館の宿泊
- 三旅客又は荷物の運輸
- 四動産の保存
- 五動産の売買
- 六種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
- 七農業の労務
- 八工業の労務
- 不動産賃貸の先取特権
- 第三百十二条不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲
- 第三百十三条土地の賃貸人の先取特権は、その土地又はその利用のための建物に備え付けられた動産、その土地の利用に供された動産及び賃借人が占有するその土地の果実について存在する。
- 2建物の賃貸人の先取特権は、賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する。
- 第三百十四条賃借権の譲渡又は転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人又は転借人の動産にも及ぶ。譲渡人又は転貸人が受けるべき金銭についても、同様とする。
不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲
- 第三百十五条賃借人の財産のすべてを清算する場合には、賃貸人の先取特権は、前期、当期及び次期の賃料その他の債務並びに前期及び当期に生じた損害の賠償債務についてのみ存在する。
- 第三百十六条賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。
- 旅館宿泊の先取特権
- 第三百十七条旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。
- 運輸の先取特権
- 第三百十八条運輸の先取特権は、旅客又は荷物の運送賃及び付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について存在する。
- 即時取得の規定の準用
- 第三百十九条第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。
- 動産保存の先取特権
- 第三百二十条動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。
- 動産売買の先取特権
- 第三百二十一条動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。
- 種苗又は肥料の供給の先取特権
- 第三百二十二条種苗又は肥料の供給の先取特権は、種苗又は肥料の代価及びその利息に関し、その種苗又は肥料を用いた後一年以内にこれを用いた土地から生じた果実(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉の使用によって生じた物を含む。)について存在する。
- 農業労務の先取特権
- 第三百二十三条農業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の一年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。
- 工業労務の先取特権
- 第三百二十四条工業の労務の先取特権は、その労務に従事する者の最後の三箇月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。
第三款不動産の先取特権
- 不動産の先取特権
- 第三百二十五条次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
- 一不動産の保存
- 二不動産の工事
- 三不動産の売買
- 不動産保存の先取特権
- 第三百二十六条不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。
- 不動産工事の先取特権
- 第三百二十七条不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
- 2前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
- 不動産売買の先取特権
- 第三百二十八条不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。
第三節先取特権の順位
- 一般の先取特権の順位
- 第三百二十九条一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う。
- 2一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。
- 動産の先取特権の順位
- 第三百三十条同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
- 一不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
- 二動産の保存の先取特権
- 三動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権
- 2前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。
- 3果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。
- 不動産の先取特権の順位
- 第三百三十一条同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百二十五条各号に掲げる順序に従う。
- 2同一の不動産について売買が順次された場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後による。
- 同一順位の先取特権
- 第三百三十二条同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
第四節先取特権の効力
- 先取特権と第三取得者
- 第三百三十三条先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
- 先取特権と動産質権との競合
- 第三百三十四条先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第三百三十条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。
- 一般の先取特権の効力
- 第三百三十五条一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
- 2一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
- 3一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
- 4前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。
- 一般の先取特権の対抗力
- 第三百三十六条一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
- 不動産保存の先取特権の登記
- 第三百三十七条不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。
- 不動産工事の先取特権の登記
- 第三百三十八条不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。
- 2工事によって生じた不動産の増価額は、配当加入の時に、裁判所が選任した鑑定人に評価させなければならない。
- 登記をした不動産保存又は不動産工事の先取特権
- 第三百三十九条前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。
- 不動産売買の先取特権の登記
- 第三百四十条不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価又はその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。
- 抵当権に関する規定の準用
- 第三百四十一条先取特権の効力については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、抵当権に関する規定を準用する。
第九章質権
第一節総則
- 質権の内容
- 第三百四十二条質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 質権の目的
- 第三百四十三条質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。
- 質権の設定
- 第三百四十四条質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
- 質権設定者による代理占有の禁止
- 第三百四十五条質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
- 質権の被担保債権の範囲
- 第三百四十六条質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 質物の留置
- 第三百四十七条質権者は、前条に規定する債権の弁済を受けるまでは、質物を留置することができる。ただし、この権利は、自己に対して優先権を有する債権者に対抗することができない。
- 転質
- 第三百四十八条質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
- 契約による質物の処分の禁止
- 第三百四十九条質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。
- 留置権及び先取特権の規定の準用
- 第三百五十条第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。
- 物上保証人の求償権
- 第三百五十一条他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
第二節動産質
- 動産質の対抗要件
- 第三百五十二条動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
- 質物の占有の回復
- 第三百五十三条動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
- 動産質権の実行
- 第三百五十四条動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。
- 動産質権の順位
- 第三百五十五条同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による。
第三節不動産質
- 不動産質権者による使用及び収益
- 第三百五十六条不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
- 不動産質権者による管理の費用等の負担
- 第三百五十七条不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。
- 不動産質権者による利息の請求の禁止
- 第三百五十八条不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。
- 設定行為に別段の定めがある場合等
- 第三百五十九条前三条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行をいう。以下同じ。)の開始があったときは、適用しない。
- 不動産質権の存続期間
- 第三百六十条不動産質権の存続期間は、十年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、十年とする。
- 2不動産質権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から十年を超えることができない。
- 抵当権の規定の準用
- 第三百六十一条不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する。
第四節権利質
- 権利質の目的等
- 第三百六十二条質権は、財産権をその目的とすることができる。
- 2前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。
- 債権質の設定
- 第三百六十三条債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。
- 指名債権を目的とする質権の対抗要件
- 第三百六十四条指名債権を質権の目的としたときは、第四百六十七条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
- 2前項の規定は、株式については、適用しない。
- 記名社債を目的とする質権の対抗要件
- 第三百六十五条記名社債を質権の目的としたときは、社債の譲渡に関する規定に従い会社の帳簿に質権の設定を記入しなければ、これをもって会社その他の第三者に対抗することができない。
- 指図債権を目的とする質権の対抗要件
- 第三百六十六条指図債権を質権の目的としたときは、その証書に質権の設定の裏書をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
- 質権者による債権の取立て等
- 第三百六十七条質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
- 2債権の目的物が金銭であるときは、質権者は、自己の債権額に対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
- 3前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
- 4債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けた物について質権を有する。
- 第三百六十八条削除
第十章抵当権
第一節総則
- 抵当権の内容
- 第三百六十九条抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
- 2地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
抵当権の効力の及ぶ範囲
- 第三百七十条抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
- 第三百七十一条抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
- 留置権等の規定の準用
- 第三百七十二条第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
第二節抵当権の効力
- 抵当権の順位
- 第三百七十三条同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
- 抵当権の順位の変更
- 第三百七十四条抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
- 2前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
- 抵当権の被担保債権の範囲
- 第三百七十五条抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
- 2前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
- 抵当権の処分
- 第三百七十六条抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
- 2前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
- 抵当権の処分の対抗要件
- 第三百七十七条前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
- 2主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
- 代価弁済
- 第三百七十八条抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
抵当権消滅請求
- 第三百七十九条抵当不動産の第三取得者は、第三百八十三条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。
- 第三百八十条主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
- 第三百八十一条抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。
- 抵当権消滅請求の時期
- 第三百八十二条抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。
- 抵当権消滅請求の手続
- 第三百八十三条抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
- 一取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
- 二抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。
- 三債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
- 債権者のみなし承諾
- 第三百八十四条次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。
- 一その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。
- 二その債権者が前号の申立てを取り下げたとき。
- 三第一号の申立てを却下する旨の決定が確定したとき。
- 四第一号の申立てに基づく競売の手続を取り消す旨の決定(民事執行法第百八十八条において準用する同法第六十三条第三項若しくは第六十八条の三第三項の規定又は同法第百八十三条第一項第五号の謄本が提出された場合における同条第二項の規定による決定を除く。)が確定したとき。
- 競売の申立ての通知
- 第三百八十五条第三百八十三条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、前条第一号の申立てをするときは、同号の期間内に、債務者及び抵当不動産の譲渡人にその旨を通知しなければならない。
- 抵当権消滅請求の効果
- 第三百八十六条登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。
- 抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力
- 第三百八十七条登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
- 2抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。
- 法定地上権
- 第三百八十八条土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
- 抵当地の上の建物の競売
- 第三百八十九条抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
- 2前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。
- 抵当不動産の第三取得者による買受け
- 第三百九十条抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。
- 抵当不動産の第三取得者による費用の償還請求
- 第三百九十一条抵当不動産の第三取得者は、抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは、第百九十六条の区別に従い、抵当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受けることができる。
- 共同抵当における代価の配当
- 第三百九十二条債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
- 2債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。
- 共同抵当における代位の付記登記
- 第三百九十三条前条第二項後段の規定により代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登記にその代位を付記することができる。
- 抵当不動産以外の財産からの弁済
- 第三百九十四条抵当権者は、抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ、他の財産から弁済を受けることができる。
- 2前項の規定は、抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すべき場合には、適用しない。この場合において、他の各債権者は、抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため、抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。
- 抵当建物使用者の引渡しの猶予
- 第三百九十五条抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
- 一競売手続の開始前から使用又は収益をする者
- 二強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
- 2前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。
第三節抵当権の消滅
- 抵当権の消滅時効
- 第三百九十六条抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。
- 抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅
- 第三百九十七条債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
- 抵当権の目的である地上権等の放棄
- 第三百九十八条地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
第四節根抵当
- 根抵当権
- 第三百九十八条の二抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
- 2前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
- 3特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。
- 根抵当権の被担保債権の範囲
- 第三百九十八条の三根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
- 2債務者との取引によらないで取得する手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。
- 一債務者の支払の停止
- 二債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立て
- 三抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え
- 根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更
- 第三百九十八条の四元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
- 2前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
- 3第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。
- 根抵当権の極度額の変更
- 第三百九十八条の五根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。
- 根抵当権の元本確定期日の定め
- 第三百九十八条の六根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
- 2第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。
- 3第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。
- 4第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。
- 根抵当権の被担保債権の譲渡等
- 第三百九十八条の七元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
- 2元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。
- 3元本の確定前に債権者又は債務者の交替による更改があったときは、その当事者は、第五百十八条の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。
- 根抵当権者又は債務者の相続
- 第三百九十八条の八元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
- 2元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
- 3第三百九十八条の四第二項の規定は、前二項の合意をする場合について準用する。
- 4第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。
- 根抵当権者又は債務者の合併
- 第三百九十八条の九元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保する。
- 2元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保する。
- 3前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる。ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない。
- 4前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす。
- 5第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする。
- 根抵当権者又は債務者の会社分割
- 第三百九十八条の十元本の確定前に根抵当権者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に取得する債権を担保する。
- 2元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割によって設立された会社又は営業を承継した会社が分割後に負担する債務を担保する。
- 3前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する。
- 根抵当権の処分
- 第三百九十八条の十一元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。
- 2第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。
- 根抵当権の譲渡
- 第三百九十八条の十二元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
- 2根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
- 3前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
- 根抵当権の一部譲渡
- 第三百九十八条の十三元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。
- 根抵当権の共有
- 第三百九十八条の十四根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
- 2根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
- 抵当権の順位の譲渡又は放棄と根抵当権の譲渡又は一部譲渡
- 第三百九十八条の十五抵当権の順位の譲渡又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡又は放棄の利益を受ける。
- 共同根抵当
- 第三百九十八条の十六第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。
- 共同根抵当の変更等
- 第三百九十八条の十七前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。
- 2前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。
- 累積根抵当
- 第三百九十八条の十八数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。
- 根抵当権の元本の確定請求
- 第三百九十八条の十九根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
- 2根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する。
- 3前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない。
- 根抵当権の元本の確定事由
- 第三百九十八条の二十次に掲げる場合には、根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
- 一根抵当権者が抵当不動産について競売若しくは担保不動産収益執行又は第三百七十二条において準用する第三百四条の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る。
- 二根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたとき。
- 三根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したとき。
- 四債務者又は根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。
- 2前項第三号の競売手続の開始若しくは差押え又は同項第四号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。
- 根抵当権の極度額の減額請求
- 第三百九十八条の二十一元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。
- 2第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、前項の規定による請求は、そのうちの一個の不動産についてすれば足りる。
- 根抵当権の消滅請求
- 第三百九十八条の二十二元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する。
- 2第三百九十八条の十六の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について前項の消滅請求があったときは、消滅する。
- 3第三百八十条及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する。
第三編債権
第一章総則
第一節債権の目的
- 債権の目的
- 第三百九十九条債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
- 特定物の引渡しの場合の注意義務
- 第四百条債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
- 種類債権
- 第四百一条債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
- 2前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。
金銭債権
- 第四百二条債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
- 2債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制通用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
- 3前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
- 第四百三条外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
- 法定利率
- 第四百四条利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
- 利息の元本への組入れ
- 第四百五条利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。
- 選択債権における選択権の帰属
- 第四百六条債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。
- 選択権の行使
- 第四百七条前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。
- 2前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。
- 選択権の移転
- 第四百八条債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。
- 第三者の選択権
- 第四百九条第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。
- 2前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。
- 不能による選択債権の特定
- 第四百十条債権の目的である給付の中に、初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
- 2選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、前項の規定は、適用しない。
- 選択の効力
- 第四百十一条選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
第二節債権の効力
第一款債務不履行の責任等
- 履行期と履行遅滞
- 第四百十二条債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
- 2債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
- 3債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 受領遅滞
- 第四百十三条債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。
- 履行の強制
- 第四百十四条債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
- 3不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。
- 4前三項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
- 債務不履行による損害賠償
- 第四百十五条債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
- 損害賠償の範囲
- 第四百十六条債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
- 2特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
- 損害賠償の方法
- 第四百十七条損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
- 過失相殺
- 第四百十八条債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
- 金銭債務の特則
- 第四百十九条金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
- 2前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
- 3第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
賠償額の予定
- 第四百二十条当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
- 2賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
- 3違約金は、賠償額の予定と推定する。
- 第四百二十一条前条の規定は、当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合について準用する。
- 損害賠償による代位
- 第四百二十二条債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
第二款債権者代位権及び詐害行為取消権
- 債権者代位権
- 第四百二十三条債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
- 2債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
- 詐害行為取消権
- 第四百二十四条債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
- 2前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。
- 詐害行為の取消しの効果
- 第四百二十五条前条の規定による取消しは、すべての債権者の利益のためにその効力を生ずる。
- 詐害行為取消権の期間の制限
- 第四百二十六条第四百二十四条の規定による取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
第三節多数当事者の債権及び債務
第一款総則
- 分割債権及び分割債務
- 第四百二十七条数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
第二款不可分債権及び不可分債務
- 不可分債権
- 第四百二十八条債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
- 不可分債権者の一人について生じた事由等の効力
- 第四百二十九条不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。
- 2前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じない。
- 不可分債務
- 第四百三十条前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
- 可分債権又は可分債務への変更
- 第四百三十一条不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。
第三款連帯債務
- 履行の請求
- 第四百三十二条数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
- 連帯債務者の一人についての法律行為の無効等
- 第四百三十三条連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
- 連帯債務者の一人に対する履行の請求
- 第四百三十四条連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。
- 連帯債務者の一人との間の更改
- 第四百三十五条連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
- 連帯債務者の一人による相殺等
- 第四百三十六条連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
- 2前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。
- 連帯債務者の一人に対する免除
- 第四百三十七条連帯債務者の一人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる。
- 連帯債務者の一人との間の混同
- 第四百三十八条連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
- 連帯債務者の一人についての時効の完成
- 第四百三十九条連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者も、その義務を免れる。
- 相対的効力の原則
- 第四百四十条第四百三十四条から前条までに規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。
- 連帯債務者についての破産手続の開始
- 第四百四十一条連帯債務者の全員又はそのうちの数人が破産手続開始の決定を受けたときは、債権者は、その債権の全額について各破産財団の配当に加入することができる。
- 連帯債務者間の求償権
- 第四百四十二条連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、他の連帯債務者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
- 2前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
- 通知を怠った連帯債務者の求償の制限
- 第四百四十三条連帯債務者の一人が債権者から履行の請求を受けたことを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、過失のある連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
- 2連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済をし、その他有償の行為をもって免責を得たときは、その免責を得た連帯債務者は、自己の弁済その他免責のためにした行為を有効であったものとみなすことができる。
- 償還をする資力のない者の負担部分の分担
- 第四百四十四条連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。
- 連帯の免除と弁済をする資力のない者の負担部分の分担
- 第四百四十五条連帯債務者の一人が連帯の免除を得た場合において、他の連帯債務者の中に弁済をする資力のない者があるときは、債権者は、その資力のない者が弁済をすることができない部分のうち連帯の免除を得た者が負担すべき部分を負担する。
第四款保証債務
第一目総則
- 保証人の責任等
- 第四百四十六条保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
- 2保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
- 3保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
- 保証債務の範囲
- 第四百四十七条保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。
- 2保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。
- 保証人の負担が主たる債務より重い場合
- 第四百四十八条保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。
- 取り消すことができる債務の保証
- 第四百四十九条行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する。
- 保証人の要件
- 第四百五十条債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
- 一行為能力者であること。
- 二弁済をする資力を有すること。
- 2保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。
- 3前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。
- 他の担保の供与
- 第四百五十一条債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。
- 催告の抗弁
- 第四百五十二条債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
- 検索の抗弁
- 第四百五十三条債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
- 連帯保証の場合の特則
- 第四百五十四条保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。
- 催告の抗弁及び検索の抗弁の効果
- 第四百五十五条第四百五十二条又は第四百五十三条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。
- 数人の保証人がある場合
- 第四百五十六条数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。
- 主たる債務者について生じた事由の効力
- 第四百五十七条主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
- 2保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。
- 連帯保証人について生じた事由の効力
- 第四百五十八条第四百三十四条から第四百四十条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。
- 委託を受けた保証人の求償権
- 第四百五十九条保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
- 2第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
- 委託を受けた保証人の事前の求償権
- 第四百六十条保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
- 一主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
- 二債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
- 三債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。
- 主たる債務者が保証人に対して償還をする場合
- 第四百六十一条前二条の規定により主たる債務者が保証人に対して償還をする場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、主たる債務者は、保証人に担保を供させ、又は保証人に対して自己に免責を得させることを請求することができる。
- 2前項に規定する場合において、主たる債務者は、供託をし、担保を供し、又は保証人に免責を得させて、その償還の義務を免れることができる。
- 委託を受けない保証人の求償権
- 第四百六十二条主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。
- 2主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
- 通知を怠った保証人の求償の制限
- 第四百六十三条第四百四十三条の規定は、保証人について準用する。
- 2保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、善意で弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、第四百四十三条の規定は、主たる債務者についても準用する。
- 連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権
- 第四百六十四条連帯債務者又は不可分債務者の一人のために保証をした者は、他の債務者に対し、その負担部分のみについて求償権を有する。
- 共同保証人間の求償権
- 第四百六十五条第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
- 2第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。
第二目貸金等根保証契約
- 貸金等根保証契約の保証人の責任等
- 第四百六十五条の二一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
- 2貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
- 3第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
- 貸金等根保証契約の元本確定期日
- 第四百六十五条の三貸金等根保証契約において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
- 2貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。
- 3貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。
- 4第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。
- 貸金等根保証契約の元本の確定事由
- 第四百六十五条の四次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。
- 一債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
- 二主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
- 三主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
- 保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権
- 第四百六十五条の五保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、第四百六十五条の二第一項に規定する極度額の定めがないとき、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第四百六十五条の三第一項若しくは第三項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は、その効力を生じない。
第四節債権の譲渡
- 債権の譲渡性
- 第四百六十六条債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
- 指名債権の譲渡の対抗要件
- 第四百六十七条指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
- 2前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
- 指名債権の譲渡における債務者の抗弁
- 第四百六十八条債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
- 2譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
- 指図債権の譲渡の対抗要件
- 第四百六十九条指図債権の譲渡は、その証書に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
- 指図債権の債務者の調査の権利等
- 第四百七十条指図債権の債務者は、その証書の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。ただし、債務者に悪意又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする。
- 記名式所持人払債権の債務者の調査の権利等
- 第四百七十一条前条の規定は、債権に関する証書に債権者を指名する記載がされているが、その証書の所持人に弁済をすべき旨が付記されている場合について準用する。
- 指図債権の譲渡における債務者の抗弁の制限
- 第四百七十二条指図債権の債務者は、その証書に記載した事項及びその証書の性質から当然に生ずる結果を除き、その指図債権の譲渡前の債権者に対抗することができた事由をもって善意の譲受人に対抗することができない。
- 無記名債権の譲渡における債務者の抗弁の制限
- 第四百七十三条前条の規定は、無記名債権について準用する。
第五節債権の消滅
第一款弁済
第一目総則
- 第三者の弁済
- 第四百七十四条債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
- 2利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
弁済として引き渡した物の取戻し
- 第四百七十五条弁済をした者が弁済として他人の物を引き渡したときは、その弁済をした者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
- 第四百七十六条譲渡につき行為能力の制限を受けた所有者が弁済として物の引渡しをした場合において、その弁済を取り消したときは、その所有者は、更に有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことができない。
- 弁済として引き渡した物の消費又は譲渡がされた場合の弁済の効力等
- 第四百七十七条前二条の場合において、債権者が弁済として受領した物を善意で消費し、又は譲り渡したときは、その弁済は、有効とする。この場合において、債権者が第三者から賠償の請求を受けたときは、弁済をした者に対して求償をすることを妨げない。
- 債権の準占有者に対する弁済
- 第四百七十八条債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
- 受領する権限のない者に対する弁済
- 第四百七十九条前条の場合を除き、弁済を受領する権限を有しない者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
- 受取証書の持参人に対する弁済
- 第四百八十条受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
- 支払の差止めを受けた第三債務者の弁済
- 第四百八十一条支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる。
- 2前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。
- 代物弁済
- 第四百八十二条債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
- 特定物の現状による引渡し
- 第四百八十三条債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
- 弁済の場所
- 第四百八十四条弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
- 弁済の費用
- 第四百八十五条弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
- 受取証書の交付請求
- 第四百八十六条弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。
- 債権証書の返還請求
- 第四百八十七条債権に関する証書がある場合において、弁済をした者が全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求することができる。
- 弁済の充当の指定
- 第四百八十八条債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
- 2弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
- 3前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする。
- 法定充当
- 第四百八十九条弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
- 一債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
- 二すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
- 三債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
- 四前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。
- 数個の給付をすべき場合の充当
- 第四百九十条一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、前二条の規定を準用する。
- 元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当
- 第四百九十一条債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。
- 2第四百八十九条の規定は、前項の場合について準用する。
- 弁済の提供の効果
- 第四百九十二条債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。
- 弁済の提供の方法
- 第四百九十三条弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。
第二目弁済の目的物の供託
- 供託
- 第四百九十四条債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。
- 供託の方法
- 第四百九十五条前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
- 2供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
- 3前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。
- 供託物の取戻し
- 第四百九十六条債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
- 2前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。
- 供託に適しない物等
- 第四百九十七条弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも、同様とする。
- 供託物の受領の要件
- 第四百九十八条債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。
第三目弁済による代位
- 任意代位
- 第四百九十九条債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
- 2第四百六十七条の規定は、前項の場合について準用する。
- 法定代位
- 第五百条弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
- 弁済による代位の効果
- 第五百一条前二条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
- 一保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
- 二第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
- 三第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
- 四物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
- 五保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
- 六前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第一号の規定を準用する。
- 一部弁済による代位
- 第五百二条債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使する。
- 2前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。
- 債権者による債権証書の交付等
- 第五百三条代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
- 2債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
- 債権者による担保の喪失等
- 第五百四条第五百条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる。
第二款相殺
- 相殺の要件等
- 第五百五条二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
- 相殺の方法及び効力
- 第五百六条相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
- 2前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
- 履行地の異なる債務の相殺
- 第五百七条相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。
- 時効により消滅した債権を自働債権とする相殺
- 第五百八条時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
- 不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止
- 第五百九条債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
- 差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止
- 第五百十条債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
- 支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止
- 第五百十一条支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
- 相殺の充当
- 第五百十二条第四百八十八条から第四百九十一条までの規定は、相殺について準用する。
第三款更改
- 更改
- 第五百十三条当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する。
- 2条件付債務を無条件債務としたとき、無条件債務に条件を付したとき、又は債務の条件を変更したときは、いずれも債務の要素を変更したものとみなす。
- 債務者の交替による更改
- 第五百十四条債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。ただし、更改前の債務者の意思に反するときは、この限りでない。
債権者の交替による更改
- 第五百十五条債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
- 第五百十六条第四百六十八条第一項の規定は、債権者の交替による更改について準用する。
- 更改前の債務が消滅しない場合
- 第五百十七条更改によって生じた債務が、不法な原因のため又は当事者の知らない事由によって成立せず又は取り消されたときは、更改前の債務は、消滅しない。
- 更改後の債務への担保の移転
- 第五百十八条更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
第四款免除
- 第五百十九条債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
第五款混同
- 第五百二十条債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
第二章契約
第一節総則
第一款契約の成立
- 承諾の期間の定めのある申込み
- 第五百二十一条承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。
- 2申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
- 承諾の通知の延着
- 第五百二十二条前条第一項の申込みに対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。
- 2申込者が前項本文の延着の通知を怠ったときは、承諾の通知は、前条第一項の期間内に到達したものとみなす。
- 遅延した承諾の効力
- 第五百二十三条申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
- 承諾の期間の定めのない申込み
- 第五百二十四条承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
- 申込者の死亡又は行為能力の喪失
- 第五百二十五条第九十七条第二項の規定は、申込者が反対の意思を表示した場合又はその相手方が申込者の死亡若しくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には、適用しない。
- 隔地者間の契約の成立時期
- 第五百二十六条隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
- 2申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
- 申込みの撤回の通知の延着
- 第五百二十七条申込みの撤回の通知が承諾の通知を発した後に到達した場合であっても、通常の場合にはその前に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、承諾者は、遅滞なく、申込者に対してその延着の通知を発しなければならない。
- 2承諾者が前項の延着の通知を怠ったときは、契約は、成立しなかったものとみなす。
- 申込みに変更を加えた承諾
- 第五百二十八条承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
- 懸賞広告
- 第五百二十九条ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下この款において「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者に対してその報酬を与える義務を負う。
- 懸賞広告の撤回
- 第五百三十条前条の場合において、懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、前の広告と同一の方法によってその広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。
- 2前項本文に規定する方法によって撤回をすることができない場合には、他の方法によって撤回をすることができる。この場合において、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。
- 3懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めたときは、その撤回をする権利を放棄したものと推定する。
- 懸賞広告の報酬を受ける権利
- 第五百三十一条広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。
- 2数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。
- 3前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。
- 優等懸賞広告
- 第五百三十二条広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。
- 2前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。
- 3応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。
- 4前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。
第二款契約の効力
- 同時履行の抗弁
- 第五百三十三条双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
- 債権者の危険負担
- 第五百三十四条特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
- 2不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
- 停止条件付双務契約における危険負担
- 第五百三十五条前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
- 2停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
- 3停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
- 債務者の危険負担等
- 第五百三十六条前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
- 2債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
- 第三者のためにする契約
- 第五百三十七条契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
- 2前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
- 第三者の権利の確定
- 第五百三十八条前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
- 債務者の抗弁
- 第五百三十九条債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
第三款契約の解除
- 解除権の行使
- 第五百四十条契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
- 2前項の意思表示は、撤回することができない。
- 履行遅滞等による解除権
- 第五百四十一条当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
- 定期行為の履行遅滞による解除権
- 第五百四十二条契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。
- 履行不能による解除権
- 第五百四十三条履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
- 解除権の不可分性
- 第五百四十四条当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
- 2前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
- 解除の効果
- 第五百四十五条当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
- 2前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
- 3解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
- 契約の解除と同時履行
- 第五百四十六条第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
- 催告による解除権の消滅
- 第五百四十七条解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
- 解除権者の行為等による解除権の消滅
- 第五百四十八条解除権を有する者が自己の行為若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。
- 2契約の目的物が解除権を有する者の行為又は過失によらないで滅失し、又は損傷したときは、解除権は、消滅しない。
第二節贈与
- 贈与
- 第五百四十九条贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
- 書面によらない贈与の撤回
- 第五百五十条書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
- 贈与者の担保責任
- 第五百五十一条贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
- 2負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
- 定期贈与
- 第五百五十二条定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。
- 負担付贈与
- 第五百五十三条負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。
- 死因贈与
- 第五百五十四条贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。
第三節売買
第一款総則
- 売買
- 第五百五十五条売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
- 売買の一方の予約
- 第五百五十六条売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
- 2前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。
- 手付
- 第五百五十七条買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
- 2第五百四十五条第三項の規定は、前項の場合には、適用しない。
- 売買契約に関する費用
- 第五百五十八条売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
- 有償契約への準用
- 第五百五十九条この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
第二款売買の効力
- 他人の権利の売買における売主の義務
- 第五百六十条他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
- 他人の権利の売買における売主の担保責任
- 第五百六十一条前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。
- 他人の権利の売買における善意の売主の解除権
- 第五百六十二条売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。
- 2前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任
- 第五百六十三条売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
- 2前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
- 3代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。
- 第五百六十四条前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない。
- 数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任
- 第五百六十五条前二条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。
- 地上権等がある場合等における売主の担保責任
- 第五百六十六条売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
- 2前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
- 3前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
- 抵当権等がある場合における売主の担保責任
- 第五百六十七条売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
- 2買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
- 3前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。
- 強制競売における担保責任
- 第五百六十八条強制競売における買受人は、第五百六十一条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。
- 2前項の場合において、債務者が無資力であるときは、買受人は、代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
- 3前二項の場合において、債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。
- 債権の売主の担保責任
- 第五百六十九条債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。
- 2弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。
- 売主の瑕疵担保責任
- 第五百七十条売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
- 売主の担保責任と同時履行
- 第五百七十一条第五百三十三条の規定は、第五百六十三条から第五百六十六条まで及び前条の場合について準用する。
- 担保責任を負わない旨の特約
- 第五百七十二条売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
- 代金の支払期限
- 第五百七十三条売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する。
- 代金の支払場所
- 第五百七十四条売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
- 果実の帰属及び代金の利息の支払
- 第五百七十五条まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
- 2買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
- 権利を失うおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶
- 第五百七十六条売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。
- 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶
- 第五百七十七条買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
- 2前項の規定は、買い受けた不動産について先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。
- 売主による代金の供託の請求
- 第五百七十八条前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる。
第三款買戻し
- 買戻しの特約
- 第五百七十九条不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
- 買戻しの期間
- 第五百八十条買戻しの期間は、十年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする。
- 2買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない。
- 3買戻しについて期間を定めなかったときは、五年以内に買戻しをしなければならない。
- 買戻しの特約の対抗力
- 第五百八十一条売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対しても、その効力を生ずる。
- 2登記をした賃借人の権利は、その残存期間中一年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない。
- 買戻権の代位行使
- 第五百八十二条売主の債権者が第四百二十三条の規定により売主に代わって買戻しをしようとするときは、買主は、裁判所において選任した鑑定人の評価に従い、不動産の現在の価額から売主が返還すべき金額を控除した残額に達するまで売主の債務を弁済し、なお残余があるときはこれを売主に返還して、買戻権を消滅させることができる。
- 買戻しの実行
- 第五百八十三条売主は、第五百八十条に規定する期間内に代金及び契約の費用を提供しなければ、買戻しをすることができない。
- 2買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第百九十六条の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
共有持分の買戻特約付売買
- 第五百八十四条不動産の共有者の一人が買戻しの特約を付してその持分を売却した後に、その不動産の分割又は競売があったときは、売主は、買主が受け、若しくは受けるべき部分又は代金について、買戻しをすることができる。ただし、売主に通知をしないでした分割及び競売は、売主に対抗することができない。
- 第五百八十五条前条の場合において、買主が不動産の競売における買受人となったときは、売主は、競売の代金及び第五百八十三条に規定する費用を支払って買戻しをすることができる。この場合において、売主は、その不動産の全部の所有権を取得する。
- 2他の共有者が分割を請求したことにより買主が競売における買受人となったときは、売主は、その持分のみについて買戻しをすることはできない。
第四節交換
- 第五百八十六条交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。
- 2当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。
第五節消費貸借
- 消費貸借
- 第五百八十七条消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
- 準消費貸借
- 第五百八十八条消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
- 消費貸借の予約と破産手続の開始
- 第五百八十九条消費貸借の予約は、その後に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
- 貸主の担保責任
- 第五百九十条利息付きの消費貸借において、物に隠れた瑕疵があったときは、貸主は、瑕疵がない物をもってこれに代えなければならない。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
- 2無利息の消費貸借においては、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。この場合において、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項の規定を準用する。
- 返還の時期
- 第五百九十一条当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
- 2借主は、いつでも返還をすることができる。
- 価額の償還
- 第五百九十二条借主が貸主から受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときは、その時における物の価額を償還しなければならない。ただし、第四百二条第二項に規定する場合は、この限りでない。
第六節使用貸借
- 使用貸借
- 第五百九十三条使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
- 借主による使用及び収益
- 第五百九十四条借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
- 2借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
- 3借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
- 借用物の費用の負担
- 第五百九十五条借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
- 2第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。
- 貸主の担保責任
- 第五百九十六条第五百五十一条の規定は、使用貸借について準用する。
- 借用物の返還の時期
- 第五百九十七条借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
- 2当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
- 3当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。
- 借主による収去
- 第五百九十八条借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。
- 借主の死亡による使用貸借の終了
- 第五百九十九条使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。
- 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限
- 第六百条契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
第七節賃貸借
第一款総則
- 賃貸借
- 第六百一条賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
- 短期賃貸借
- 第六百二条処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
- 一樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借十年
- 二前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借五年
- 三建物の賃貸借三年
- 四動産の賃貸借六箇月
- 短期賃貸借の更新
- 第六百三条前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。
- 賃貸借の存続期間
- 第六百四条賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
- 2賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。
第二款賃貸借の効力
- 不動産賃貸借の対抗力
- 第六百五条不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
- 賃貸物の修繕等
- 第六百六条賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
- 2賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
- 賃借人の意思に反する保存行為
- 第六百七条賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
- 賃借人による費用の償還請求
- 第六百八条賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
- 2賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
- 減収による賃料の減額請求
- 第六百九条収益を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。ただし、宅地の賃貸借については、この限りでない。
- 減収による解除
- 第六百十条前条の場合において、同条の賃借人は、不可抗力によって引き続き二年以上賃料より少ない収益を得たときは、契約の解除をすることができる。
- 賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等
- 第六百十一条賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
- 2前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
- 賃借権の譲渡及び転貸の制限
- 第六百十二条賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
- 2賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
- 転貸の効果
- 第六百十三条賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
- 2前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
- 賃料の支払時期
- 第六百十四条賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。
- 賃借人の通知義務
- 第六百十五条賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
- 使用貸借の規定の準用
- 第六百十六条第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規定は、賃貸借について準用する。
第三款賃貸借の終了
- 期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ
- 第六百十七条当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
- 一土地の賃貸借一年
- 二建物の賃貸借三箇月
- 三動産及び貸席の賃貸借一日
- 2収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
- 期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保
- 第六百十八条当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
- 賃貸借の更新の推定等
- 第六百十九条賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
- 2従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。
- 賃貸借の解除の効力
- 第六百二十条賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。
- 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限
- 第六百二十一条第六百条の規定は、賃貸借について準用する。
- 第六百二十二条削除
第八節雇用
- 雇用
- 第六百二十三条雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
- 報酬の支払時期
- 第六百二十四条労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
- 2期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。
- 使用者の権利の譲渡の制限等
- 第六百二十五条使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
- 2労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
- 3労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。
- 期間の定めのある雇用の解除
- 第六百二十六条雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、十年とする。
- 2前項の規定により契約の解除をしようとするときは、三箇月前にその予告をしなければならない。
- 期間の定めのない雇用の解約の申入れ
- 第六百二十七条当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
- 2期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
- 3六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
- やむを得ない事由による雇用の解除
- 第六百二十八条当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
- 雇用の更新の推定等
- 第六百二十九条雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
- 2従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。
- 雇用の解除の効力
- 第六百三十条第六百二十条の規定は、雇用について準用する。
- 使用者についての破産手続の開始による解約の申入れ
- 第六百三十一条使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には、雇用に期間の定めがあるときであっても、労働者又は破産管財人は、第六百二十七条の規定により解約の申入れをすることができる。この場合において、各当事者は、相手方に対し、解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。
第九節請負
- 請負
- 第六百三十二条請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
- 報酬の支払時期
- 第六百三十三条報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
請負人の担保責任
- 第六百三十四条仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
- 2注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。
- 第六百三十五条仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
- 請負人の担保責任に関する規定の不適用
- 第六百三十六条前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
請負人の担保責任の存続期間
- 第六百三十七条前三条の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
- 2仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。
- 第六百三十八条建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。
- 2工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から一年以内に、第六百三十四条の規定による権利を行使しなければならない。
- 担保責任の存続期間の伸長
- 第六百三十九条第六百三十七条及び前条第一項の期間は、第百六十七条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。
- 担保責任を負わない旨の特約
- 第六百四十条請負人は、第六百三十四条又は第六百三十五条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
- 注文者による契約の解除
- 第六百四十一条請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
- 注文者についての破産手続の開始による解除
- 第六百四十二条注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。この場合において、請負人は、既にした仕事の報酬及びその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。
- 2前項の場合には、契約の解除によって生じた損害の賠償は、破産管財人が契約の解除をした場合における請負人に限り、請求することができる。この場合において、請負人は、その損害賠償について、破産財団の配当に加入する。
第十節委任
- 委任
- 第六百四十三条委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
- 受任者の注意義務
- 第六百四十四条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
- 受任者による報告
- 第六百四十五条受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
- 受任者による受取物の引渡し等
- 第六百四十六条受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
- 2受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
- 受任者の金銭の消費についての責任
- 第六百四十七条受任者は、委任者に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
- 受任者の報酬
- 第六百四十八条受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
- 2受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
- 3委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
- 受任者による費用の前払請求
- 第六百四十九条委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
- 受任者による費用等の償還請求等
- 第六百五十条受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
- 2受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
- 3受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
- 委任の解除
- 第六百五十一条委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
- 2当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
- 委任の解除の効力
- 第六百五十二条第六百二十条の規定は、委任について準用する。
- 委任の終了事由
- 第六百五十三条委任は、次に掲げる事由によって終了する。
- 一委任者又は受任者の死亡
- 二委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
- 三受任者が後見開始の審判を受けたこと。
- 委任の終了後の処分
- 第六百五十四条委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。
- 委任の終了の対抗要件
- 第六百五十五条委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
- 準委任
- 第六百五十六条この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
第十一節寄託
- 寄託
- 第六百五十七条寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
- 寄託物の使用及び第三者による保管
- 第六百五十八条受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用し、又は第三者にこれを保管させることができない。
- 2第百五条及び第百七条第二項の規定は、受寄者が第三者に寄託物を保管させることができる場合について準用する。
- 無償受寄者の注意義務
- 第六百五十九条無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。
- 受寄者の通知義務
- 第六百六十条寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。
- 寄託者による損害賠償
- 第六百六十一条寄託者は、寄託物の性質又は瑕疵によって生じた損害を受寄者に賠償しなければならない。ただし、寄託者が過失なくその性質若しくは瑕疵を知らなかったとき、又は受寄者がこれを知っていたときは、この限りでない。
- 寄託者による返還請求
- 第六百六十二条当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
- 寄託物の返還の時期
- 第六百六十三条当事者が寄託物の返還の時期を定めなかったときは、受寄者は、いつでもその返還をすることができる。
- 2返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。
- 寄託物の返還の場所
- 第六百六十四条寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならない。ただし、受寄者が正当な事由によってその物を保管する場所を変更したときは、その現在の場所で返還をすることができる。
- 委任の規定の準用
- 第六百六十五条第六百四十六条から第六百五十条まで(同条第三項を除く。)の規定は、寄託について準用する。
- 消費寄託
- 第六百六十六条第五節(消費貸借)の規定は、受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合について準用する。
- 2前項において準用する第五百九十一条第一項の規定にかかわらず、前項の契約に返還の時期を定めなかったときは、寄託者は、いつでも返還を請求することができる。
第十二節組合
- 組合契約
- 第六百六十七条組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
- 2出資は、労務をその目的とすることができる。
- 組合財産の共有
- 第六百六十八条各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。
- 金銭出資の不履行の責任
- 第六百六十九条金銭を出資の目的とした場合において、組合員がその出資をすることを怠ったときは、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
- 業務の執行の方法
- 第六百七十条組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
- 2前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(次項において「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。
- 3組合の常務は、前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。
- 委任の規定の準用
- 第六百七十一条第六百四十四条から第六百五十条までの規定は、組合の業務を執行する組合員について準用する。
- 業務執行組合員の辞任及び解任
- 第六百七十二条組合契約で一人又は数人の組合員に業務の執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができない。
- 2前項の組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができる。
- 組合員の組合の業務及び財産状況に関する検査
- 第六百七十三条各組合員は、組合の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務及び組合財産の状況を検査することができる。
- 組合員の損益分配の割合
- 第六百七十四条当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
- 2利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。
- 組合員に対する組合の債権者の権利の行使
- 第六百七十五条組合の債権者は、その債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる。
- 組合員の持分の処分及び組合財産の分割
- 第六百七十六条組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
- 2組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。
- 組合の債務者による相殺の禁止
- 第六百七十七条組合の債務者は、その債務と組合員に対する債権とを相殺することができない。
組合員の脱退
- 第六百七十八条組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又はある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない。
- 2組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。
- 第六百七十九条前条の場合のほか、組合員は、次に掲げる事由によって脱退する。
- 一死亡
- 二破産手続開始の決定を受けたこと。
- 三後見開始の審判を受けたこと。
- 四除名
- 組合員の除名
- 第六百八十条組合員の除名は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってすることができる。ただし、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもってその組合員に対抗することができない。
- 脱退した組合員の持分の払戻し
- 第六百八十一条脱退した組合員と他の組合員との間の計算は、脱退の時における組合財産の状況に従ってしなければならない。
- 2脱退した組合員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
- 3脱退の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
- 組合の解散事由
- 第六百八十二条組合は、その目的である事業の成功又はその成功の不能によって解散する。
- 組合の解散の請求
- 第六百八十三条やむを得ない事由があるときは、各組合員は、組合の解散を請求することができる。
- 組合契約の解除の効力
- 第六百八十四条第六百二十条の規定は、組合契約について準用する。
- 組合の清算及び清算人の選任
- 第六百八十五条組合が解散したときは、清算は、総組合員が共同して、又はその選任した清算人がこれをする。
- 2清算人の選任は、総組合員の過半数で決する。
- 清算人の業務の執行の方法
- 第六百八十六条第六百七十条の規定は、清算人が数人ある場合について準用する。
- 組合員である清算人の辞任及び解任
- 第六百八十七条第六百七十二条の規定は、組合契約で組合員の中から清算人を選任した場合について準用する。
- 清算人の職務及び権限並びに残余財産の分割方法
- 第六百八十八条第七十八条の規定は、清算人の職務及び権限について準用する。
- 2残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割する。
第十三節終身定期金
- 終身定期金契約
- 第六百八十九条終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。
- 終身定期金の計算
- 第六百九十条終身定期金は、日割りで計算する。
- 終身定期金契約の解除
- 第六百九十一条終身定期金債務者が終身定期金の元本を受領した場合において、その終身定期金の給付を怠り、又はその他の業務を履行しないときは、相手方は、元本の返還を請求することができる。この場合において、相手方は、既に受け取った終身定期金の中からその元本の利息を控除した残額を終身定期金債務者に返還しなければならない。
- 2前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
- 終身定期金契約の解除と同時履行
- 第六百九十二条第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
- 終身定期金債権の存続の宣告
- 第六百九十三条終身定期金債務者の責めに帰すべき事由によって第六百八十九条に規定する死亡が生じたときは、裁判所は、終身定期金債権者又はその相続人の請求により、終身定期金債権が相当の期間存続することを宣告することができる。
- 2前項の規定は、第六百九十一条の権利の行使を妨げない。
- 終身定期金の遺贈
- 第六百九十四条この節の規定は、終身定期金の遺贈について準用する。
第十四節和解
- 和解
- 第六百九十五条和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
- 和解の効力
- 第六百九十六条当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。
第三章事務管理
- 事務管理
- 第六百九十七条義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
- 2管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
- 緊急事務管理
- 第六百九十八条管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
- 管理者の通知義務
- 第六百九十九条管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。ただし、本人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
- 管理者による事務管理の継続
- 第七百条管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、この限りでない。
- 委任の規定の準用
- 第七百一条第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する。
- 管理者による費用の償還請求等
- 第七百二条管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
- 2第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
- 3管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。
第四章不当利得
- 不当利得の返還義務
- 第七百三条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
- 悪意の受益者の返還義務等
- 第七百四条悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
- 債務の不存在を知ってした弁済
- 第七百五条債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
- 期限前の弁済
- 第七百六条債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。
- 他人の債務の弁済
- 第七百七条債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。
- 2前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
- 不法原因給付
- 第七百八条不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
第五章不法行為
- 不法行為による損害賠償
- 第七百九条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 財産以外の損害の賠償
- 第七百十条他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
- 近親者に対する損害の賠償
- 第七百十一条他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
責任能力
- 第七百十二条未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
- 第七百十三条精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
- 責任無能力者の監督義務者等の責任
- 第七百十四条前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
- 2監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
- 使用者等の責任
- 第七百十五条ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
- 2使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
- 3前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
- 注文者の責任
- 第七百十六条注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
- 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任
- 第七百十七条土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
- 2前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
- 3前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
- 動物の占有者等の責任
- 第七百十八条動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
- 2占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。
- 共同不法行為者の責任
- 第七百十九条数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
- 2行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
- 正当防衛及び緊急避難
- 第七百二十条他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
- 2前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
- 損害賠償請求権に関する胎児の権利能力
- 第七百二十一条胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
- 損害賠償の方法及び過失相殺
- 第七百二十二条第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
- 2被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
- 名誉毀損における原状回復
- 第七百二十三条他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
- 不法行為による損害賠償請求権の期間の制限
- 第七百二十四条不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
第四編親族
第一章総則
- 親族の範囲
- 第七百二十五条
左に次に掲げる者は、これを親族とする。- 一六親等内の血族
- 二配偶者
- 三三親等内の姻族
- 親等の計算
- 第七百二十六条親等は、親族間の
世数世代数を数えて、これを定める。 - 2傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の
始祖祖先にさかのぼり、その始祖から他の一人に下るまでの世数世代数による。
- 縁組による親族関係の発生
- 第七百二十七条養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間に
おけるとおけるのと同一の親族関係を生ずる。
- 離婚等による姻族関係の終了
- 第七百二十八条姻族関係は、離婚に
よつてよって終了する。 - 2夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様
であるとする。
- 離縁による親族関係の終了
- 第七百二十九条養子
、その配偶者、及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によつてよって終了する。
- 親族間の扶け合い
- 第七百三十条直系血族及び同居の親族は、
互に扶け合わなければ互いに扶け合わなければならない。
第二章婚姻
第一節婚姻の成立
第一款婚姻の要件
- 婚姻適齢
- 第七百三十一条男は、
満十八歳十八歳に、女は、満十六歳十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。
- 重婚の禁止
- 第七百三十二条配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
- 再婚禁止期間
- 第七百三十三条女は、前婚の解消又は
取消取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。 - 2女が前婚の解消又は
取消取消しの前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
- 近親者間の婚姻の禁止
- 第七百三十四条直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。
但しただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。 - 2第八百十七条の九の規定に
よつてより親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
- 直系姻族間の婚姻の禁止
- 第七百三十五条直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定に
よつてより姻族関係が終了した後も、同様であるとする。
- 養親子等の間の婚姻の禁止
- 第七百三十六条養子
、その配偶者、直系卑属又は若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定によつてより親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
- 未成年者の婚姻についての父母の同意
- 第七百三十七条未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
- 2父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様
であるとする。
- 成年被後見人の婚姻
- 第七百三十八条成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。
- 婚姻の届出
- 第七百三十九条婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより
これを届け出ることによつてよって、その効力を生ずる。 - 2前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上
から、口頭又は署名した書面で、これをが署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
- 婚姻の届出の受理
- 第七百四十条婚姻の届出は、その婚姻が第七百三十一条
乃至第七百三十七条から第七百三十七条まで及び前条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。
- 外国に在る日本人間の婚姻の方式
- 第七百四十一条外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、前二条の規定を準用する。
第二款婚姻の無効及び取消
第二款婚姻の無効及び取消し
- 婚姻の無効
- 第七百四十二条婚姻は、
左の次に掲げる場合に限り、無効とする。- 一
人違人違いその他の事由によつてよって当事者間に婚姻をする意思がないとき。 - 二当事者が婚姻の届出をしないとき。
但しただし、その届出が第七百三十九条第二項に掲げる条件定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、これがために、そのためにその効力を妨げられることがない妨げられない。
- 一
- 婚姻の取消し
- 第七百四十三条婚姻は、
第七百四十四条乃至第七百四十七条次条から第七百四十七条までの規定によらなければ、これを取り消すことができない。
- 不適法な婚姻の取消し
- 第七百四十四条第七百三十一条から第七百三十六条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。
- 2第七百三十二条又は第七百三十三条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その
取消取消しを請求することができる。
- 不適齢者の婚姻の取消し
- 第七百四十五条第七百三十一条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その
取消取消しを請求することができない。 - 2不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の
取消取消しを請求することができる。但しただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。
- 再婚禁止期間内にした婚姻の取消し
- 第七百四十六条第七百三十三条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは
取消取消しの日から六箇月を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消取消しを請求することができない。
- 詐欺又は強迫による婚姻の取消し
- 第七百四十七条詐欺又は強迫に
よつてよって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。 - 2前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を
免かれた免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
- 婚姻の取消しの効力
- 第七百四十八条婚姻の
取消は、取消しは、将来に向かってのみその効力を既往に及ぼさない生ずる。 - 2婚姻の
当時時においてその取消取消しの原因があることを知らなかつた知らなかった当事者が、婚姻によつてよって財産を得たときは、現に利益を受ける受けている限度において、その返還をしなければならない。 - 3婚姻の
当時時においてその取消取消しの原因があることを知つていた知っていた当事者は、婚姻によつてよって得た利益の全部を返還しなければならない。なおこの場合において、相手方が善意であつたあったときは、これに対して損害を賠償する責に任ずる責任を負う。
- 離婚の規定の準用
- 第七百四十九条第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。
第二節婚姻の効力
- 夫婦の氏
- 第七百五十条夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
- 生存配偶者の復氏等
- 第七百五十一条夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。
- 2第七百六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合に
これをついて準用する。
- 同居、協力及び扶助の義務
- 第七百五十二条夫婦は同居し、
互に互いに協力し扶助しなければならない。
- 婚姻による成年擬制
- 第七百五十三条未成年者が婚姻をしたときは、これに
よつてよって成年に達したものとみなす。
- 夫婦間の契約の取消権
- 第七百五十四条夫婦間で
契約をしたときは、そのした契約は、婚姻中、何時でもいつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。但しただし、第三者の権利を害することがことはできない。
第三節夫婦財産制
第一款総則
- 夫婦の財産関係
- 第七百五十五条夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約を
しなかつたしなかったときは、その財産関係は、次の款次款に定めるところによる。
- 夫婦財産契約の対抗要件
- 第七百五十六条夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
- 第七百五十七条削除
- 夫婦の財産関係の変更の制限等
- 第七百五十八条夫婦の財産関係は、
婚姻届出の婚姻の届出後は、これを変更することができない。 - 2夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当で
あつたあったことによつてよってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。 - 3共有財産については、前項の請求とともに
その、その分割を請求することができる。
- 財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件
- 第七百五十九条前条の規定又は第七百五十五条の契約の結果に
よつて、より、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第二款法定財産制
- 婚姻費用の分担
- 第七百六十条夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
- 日常の家事に関する債務の連帯責任
- 第七百六十一条夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これに
よつてよって生じた債務について、連帯してその責に任ずる責任を負う。但しただし、第三者に対し責に任じない責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
- 夫婦間における財産の帰属
- 第七百六十二条夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
- 2夫婦のいずれに属するか
明か明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
第四節離婚
第一款協議上の離婚
- 協議上の離婚
- 第七百六十三条夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
- 婚姻の規定の準用
- 第七百六十四条第七百三十八条、第七百三十九条及び第七百四十七条の規定は、協議上の離婚に
これをついて準用する。
- 離婚の届出の受理
- 第七百六十五条離婚の届出は、その離婚が
第七百三十九条第二項前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。 - 2離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、
これがために、そのためにその効力を妨げられることがない妨げられない。
- 離婚後の子の監護に関する事項の定め等
- 第七百六十六条父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その
協議でこれを協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。 - 2子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
- 3前二項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を
生ずることがない生じない。
- 離婚による復氏等
- 第七百六十七条婚姻に
よつてよって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によつてよって婚姻前の氏に復する。 - 2前項の
規定によつて規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつてことによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。
- 財産分与
- 第七百六十八条協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
- 2前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
但しただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。 - 3前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力に
よつてよって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
- 離婚による復氏の際の権利の承継
- 第七百六十九条婚姻に
よつてよって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。 - 2前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは
、前項、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
第二款裁判上の離婚
- 裁判上の離婚
- 第七百七十条夫婦の一方は、
左の次に掲げる場合に限り、離婚の訴訴えを提起することができる。- 一配偶者に不貞な行為が
あつたあったとき。 - 二配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- 三配偶者の生死が三年以上
明か明らかでないとき。 - 四配偶者が強度の精神病にかかり、回復の
見込見込みがないとき。 - 五その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
- 一配偶者に不貞な行為が
- 2裁判所は、前項第一号
乃至第四号のから第四号までに掲げる事由があるときでも場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
- 協議上の離婚の規定の準用
- 第七百七十一条第七百六十六条
乃至第七百六十九条から第七百六十九条までの規定は、裁判上の離婚にこれをついて準用する。
第三章親子
第一節実子
- 嫡出の推定
- 第七百七十二条妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
- 2婚姻
成立の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
- 父を定めることを目的とする訴え
- 第七百七十三条第七百三十三条第一項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定に
よつてよりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。
- 嫡出の否認
- 第七百七十四条第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。
- 嫡出否認の訴え
- 第七百七十五条前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する
訴によつてこれを嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
- 嫡出の承認
- 第七百七十六条
夫が夫は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失う。
嫡出否認の訴えの出訴期間
- 第七百七十七条
否認の訴嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知つた知った時から一年以内にこれを提起しなければならない。
- 第七百七十八条夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しが
あつたあった後夫が子の出生を知つた知った時から、これを起算する。
- 認知
- 第七百七十九条嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。
- 認知能力
- 第七百八十条認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しない。
- 認知の方式
- 第七百八十一条認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることに
よつてこれをよってする。 - 2認知は、遺言に
よつても、これをよっても、することができる。
- 成年の子の認知
- 第七百八十二条成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができない。
- 胎児又は死亡した子の認知
- 第七百八十三条父は、胎内に在る子でも、
これを認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。 - 2父又は母は、死亡した子でも、その直系卑属があるときに限り、
これを認知することができる。この場合において、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾を得なければならない。
- 認知の効力
- 第七百八十四条認知は、出生の時に
さかのぼつてさかのぼってその効力を生ずる。但しただし、第三者が既に取得した権利を害することがことはできない。
- 認知の取消しの禁止
- 第七百八十五条認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができない。
- 認知に対する反対の事実の主張
- 第七百八十六条子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。
- 認知の訴え
- 第七百八十七条子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の
訴訴えを提起することができる。但しただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。
- 認知後の子の監護に関する事項の定め等
- 第七百八十八条第七百六十六条の規定は、父が認知する場合に
これをついて準用する。
- 準正
- 第七百八十九条父が認知した子は、その父母の婚姻に
よつてよって嫡出子たる身分の身分を取得する。 - 2婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子
たる身分の身分を取得する。 - 3前二項の規定は、子が既に
死亡した死亡していた場合にこれをついて準用する。
- 子の氏
- 第七百九十条嫡出である子は、父母の氏を称する。
但しただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称する。 - 2嫡出でない子は、母の氏を称する。
- 子の氏の変更
- 第七百九十一条子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることに
よつてよって、その父又は母の氏を称することができる。 - 2父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることに
よつてよって、その父母の氏を称することができる。 - 3子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに
代わつて代わって、前二項の行為をすることができる。 - 4前三項の
規定によつて規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつてことによって、従前の氏に復することができる。
第二節養子
第一款縁組の要件
- 養親となる者の年齢
- 第七百九十二条成年に達した者は、養子をすることができる。
- 尊属又は年長者を養子とすることの禁止
- 第七百九十三条尊属又は年長者は、これを養子とすることができない。
- 後見人が被後見人を養子とする縁組
- 第七百九十四条後見人が被後見人(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。後見人の任務が終了した後、まだその管理の計算が終わらない間も、同様
であるとする。
- 配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組
- 第七百九十五条配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
- 配偶者のある者の縁組
- 第七百九十六条配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。
- 十五歳未満の者を養子とする縁組
- 第七百九十七条養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに
代わつて代わって、縁組の承諾をすることができる。 - 2法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。
- 未成年者を養子とする縁組
- 第七百九十八条未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
但しただし、自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は、この限りでない。
- 婚姻の規定の準用
- 第七百九十九条第七百三十八条及び第七百三十九条の規定は、縁組に
これをついて準用する。
- 縁組の届出の受理
- 第八百条縁組の届出は、その縁組が第七百九十二条
乃至前条から前条までの規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。
- 外国に在る日本人間の縁組の方式
- 第八百一条外国に在る日本人間で縁組をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、
第七百三十九条第七百九十九条において準用する第七百三十九条の規定及び前条の規定を準用する。
第二款縁組の無効及び取消
第二款縁組の無効及び取消し
- 縁組の無効
- 第八百二条縁組は
左の、次に掲げる場合に限り、無効とする。- 一
人違人違いその他の事由によつてよって当事者間に縁組をする意思がないとき。 - 二当事者が縁組の届出をしないとき。
但しただし、その届出が第七百三十九条第二項に掲げる条件第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、これがために、そのためにその効力を妨げられることがない妨げられない。
- 一
- 縁組の取消し
- 第八百三条縁組は、
第八百四条乃至第八百八条次条から第八百八条までの規定によらなければ、これを取り消すことができない。
- 養親が未成年者である場合の縁組の取消し
- 第八百四条第七百九十二条の規定に違反した縁組は、養親又はその法定代理人から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養親が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
- 養子が尊属又は年長者である場合の縁組の取消し
- 第八百五条第七百九十三条の規定に違反した縁組は、各当事者又はその親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。
- 後見人と被後見人との間の無許可縁組の取消し
- 第八百六条第七百九十四条の規定に違反した縁組は、養子又はその実方の親族から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、管理の計算が
終わつた終わった後、養子が追認をし、又は六箇月を経過したときは、この限りでない。 - 2
追認前項ただし書の追認は、養子が、成年に達し、又は能力行為能力を回復した後、これを後にしなければ、その効力がないを生じない。 - 3養子が、成年に達せず、又は
能力行為能力を回復しない間に、管理の計算が終わつた終わった場合には、第一項但書第一項ただし書の期間は、養子が、成年に達し、又は能力を回復した時から、これを起算する。
- 配偶者の同意のない縁組等の取消し
- 第八百六条の二第七百九十六条の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が、縁組を
知つた知った後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。 - 2詐欺又は強迫に
よつてよって第七百九十六条の同意をした者は、その縁組の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
- 子の監護をすべき者の同意のない縁組等の取消し
- 第八百六条の三第七百九十七条第二項の規定に違反した縁組は、縁組の同意をしていない者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、その者が追認をしたとき、又は養子が十五歳に達した後六箇月を経過し、若しくは追認をしたときは、この限りでない。
- 2前条第二項の規定は、詐欺又は強迫に
よつてよって第七百九十七条第二項の同意をした者にこれをついて準用する。
- 養子が未成年者である場合の無許可縁組の取消し
- 第八百七条第七百九十八条の規定に違反した縁組は、養子、その実方の親族又は養子に
代わつて代わって縁組の承諾をした者から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、養子が、成年に達した後六箇月を経過し、又は追認をしたときは、この限りでない。
- 婚姻の取消し等の規定の準用
- 第八百八条第七百四十七条及び第七百四十八条の規定は、縁組
にこれをについて準用する。但し、第七百四十七条第二項の期間は、これを六箇月とする。この場合において、第七百四十七条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。 - 2第七百六十九条及び第八百十六条の規定は、縁組の
取消にこれを取消しについて準用する。
第三款縁組の効力
- 嫡出子の身分の取得
- 第八百九条養子は、縁組の日から、養親の嫡出子
たる身分の身分を取得する。
- 養子の氏
- 第八百十条養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻に
よつてよって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
第四款離縁
- 協議上の離縁等
- 第八百十一条縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
- 2養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
- 3前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。
- 4前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は
、前項、同項の父若しくは母又は養親の請求によつてよって、協議に代わる審判をすることができる。 - 5第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求に
よつてよって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。 - 6縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
- 夫婦である養親と未成年者との離縁
- 第八百十一条の二養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が
ともに共にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
- 婚姻の規定の準用
- 第八百十二条第七百三十八条、第七百三十九条
、第七百四十七条及び第八百八条第一項但書及び第七百四十七条の規定は、協議上の離縁にこれをついて準用する。この場合において、同条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。
- 離縁の届出の受理
- 第八百十三条離縁の届出は、その離縁が
第七百三十九条第二項、前条において準用する第七百三十九条第二項の規定並びに第八百十一条及び第八百十一条の二の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。 - 2離縁の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離縁は、
これがために、そのためにその効力を妨げられることがない妨げられない。
- 裁判上の離縁
- 第八百十四条縁組の当事者の一方は、
次の次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを堤起することができる。- 一他の一方から悪意で遺棄されたとき。
- 二他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
- 三その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
- 2第七百七十条第二項の規定は、前項第一号及び第二号
の場合にこれをに掲げる場合について準用する。
- 養子が十五歳未満である場合の離縁の訴えの当事者
- 第八百十五条養子が
満十五歳十五歳に達しない間は、第八百十一条の規定によつてより養親と離縁の協議をすることができる者から、又はこれに対して、離縁の訴訴えを提起することができる。
- 離縁による復氏等
- 第八百十六条養子は、離縁に
よつてよって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。 - 2縁組の日から七年を経過した後に前項の
規定によつて規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによつてことによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
- 離縁による復氏の際の権利の承継
- 第八百十七条第七百六十九条の規定は、離縁に
これをついて準用する。
第五款特別養子
- 特別養子縁組の成立
- 第八百十七条の二家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
- 2前項に規定する請求をするには、第七百九十四条又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。
- 養親の夫婦共同縁組
- 第八百十七条の三養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
- 2夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
- 養親となる者の年齢
- 第八百十七条の四二十五歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。
- 養子となる者の年齢
- 第八百十七条の五第八百十七条の二に規定する請求の時に六歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が八歳未満で
あつてあって六歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。
- 父母の同意
- 第八百十七条の六特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
- 子の利益のための特別の必要性
- 第八百十七条の七特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
- 監護の状況
- 第八百十七条の八特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
- 2前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。
- 実方との親族関係の終了
- 第八百十七条の九養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組に
よつてよって終了する。ただし、第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。
- 特別養子縁組の離縁
- 第八百十七条の十次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。
- 一養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
- 二実父母が相当の監護をすることができること。
- 2離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。
- 離縁による実方との親族関係の回復
- 第八百十七条の十一養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組に
よつてよって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。
第四章親権
第一節総則
- 親権者
- 第八百十八条成年に達しない子は、父母の親権に服する。
- 2子が養子であるときは、養親の親権に服する。
- 3親権は、父母の婚姻中は、父母が
共同してこれを共同して行う。但しただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。
- 離婚又は認知の場合の親権者
- 第八百十九条父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
- 2裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
- 3子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が
これを行う。但しただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。 - 4父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が
これを行う。 - 5第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求に
よつてよって、協議に代わる審判をすることができる。 - 6子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求に
よつてよって、親権者を他の一方に変更することができる。
第二節親権の効力
- 監護及び教育の権利義務
- 第八百二十条親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
- 居所の指定
- 第八百二十一条子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
- 懲戒
- 第八百二十二条親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。
- 2子を懲戒場に入れる期間は、六箇月以下の範囲内で、家庭裁判所が
これを定める定める。但しただし、この期間は、親権を行う者の請求によつて、何時でも、これをよって、いつでも短縮することができる。
- 職業の許可
- 第八百二十三条子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
- 2親権を行う者は、第六条第二項の場合には、前項の許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
- 財産の管理及び代表
- 第八百二十四条親権を行う者は、子の財産を管理し、
又かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。但しただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
- 父母の一方が共同の名義でした行為の効力
- 第八百二十五条父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に
代わつて代わって法律行為をし、又は子の又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、これがために、そのためにその効力を妨げられることがない妨げられない。但しただし、相手方が悪意であつたあったときは、この限りでない。
- 利益相反行為
- 第八百二十六条親権を行う父又は母とその
子と子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。 - 2親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、
その一方のために、前項の規定を準用する親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
- 財産の管理における注意義務
- 第八百二十七条親権を行う者は、自己のために
するとするのと同一の注意を以てもって、その管理権を行わなければならない。
財産の管理の計算
- 第八百二十八条子が成年に達したときは、親権を
行つた行った者は、遅滞なくその管理の計算をしなければならない。但しただし、その子の養育及び財産の管理の費用は、その子の財産の収益とこれを相殺したものとみなす。
- 第八百二十九条
前条但書前条ただし書の規定は、無償で子に財産を与える第三者が反対の意思を表示したときは、その財産については、これを適用しない。
- 第三者が無償で子に与えた財産の管理
- 第八百三十条無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。
- 2前項の財産につき父母が共に管理権を有しない場合において、第三者が管理者を
指定しなかつた指定しなかったときは、家庭裁判所は、子、その親族又は検察官の請求によつてよって、その管理者を選任する。 - 3第三者が管理者を指定したときであっても、その管理者の権限が消滅し、又はこれを改任する必要がある場合において、第三者が更に管理者を指定しないときも、前項と同様
であるとする。 - 4第二十七条
乃至第二十九条から第二十九条までの規定は、前二項の場合にこれをついて準用する。
- 委任の規定の準用
- 第八百三十一条第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、親権を行う者が子の財産を管理する場合及び前条の場合に
これをついて準用する。
- 財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効
- 第八百三十二条親権を
行つた行った者とその子との間に財産の管理について生じた債権は、その管理権が消滅した時から五年間これを行わない行使しないときは、時効によつてよって消滅する。 - 2子がまだ成年に達しない間に管理権が消滅した場合において子に法定代理人がないときは、前項の期間は、その子が成年に達し、又は後任の法定代理人が就職した時から
、これを起算する。
- 子に代わる親権の行使
- 第八百三十三条親権を行う者は、その親権に服する子に
代わつて代わって親権を行う。
第三節親権の喪失
- 親権の喪失の宣告
- 第八百三十四条父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求に
よつてよって、その親権の喪失を宣告することができる。
- 管理権の喪失の宣告
- 第八百三十五条親権を行う父又は母が、管理が失当で
あつたあったことによつてよってその子の財産を危うくしたときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によつてよって、その管理権の喪失を宣告することができる。
- 親権又は管理権の喪失の宣告の取消し
- 第八百三十六条前二条に
定める規定する原因が止んだ消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によつてよって、失権前二条の規定による親権又は管理権の喪失の宣告を取り消すことができる。
- 親権又は管理権の辞任及び回復
- 第八百三十七条親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
- 2前項の事由が
止んだ消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。
第五章後見
第一節後見の開始
- 第八百三十八条後見は、次に掲げる場合に開始する。
- 一未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
- 二後見開始の審判が
あつたあったとき。
第二節後見の機関
第一款後見人
- 未成年後見人の指定
- 第八百三十九条未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
- 2親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定に
よつてより未成年後見人の指定をすることができる。
- 未成年後見人の選任
- 第八百四十条前条の
規定によつて規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によつて請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様であるとする。
- 父母による未成年後見人の選任の請求
- 第八百四十一条父
若しくは母又は母が親権若しくは管理権を辞し、又は親権を失つた失ったことによつてよって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
- 未成年後見人の数
- 第八百四十二条未成年後見人は、一人でなければならない。
- 成年後見人の選任
- 第八百四十三条家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
- 2成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求に
よつて、より又は職権で、成年後見人を選任する。 - 3成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に
掲げる規定する者若しくは成年後見人の請求によつて、より又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。 - 4成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
- 後見人の辞任
- 第八百四十四条後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
- 辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求
- 第八百四十五条後見人がその任務を辞したことに
よつてよって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
- 後見人の解任
- 第八百四十六条後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求に
よつて、より又は職権で、これを解任することができる。
- 後見人の欠格事由
- 第八百四十七条次に掲げる者は、後見人となることができない。
- 一未成年者
- 二家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
- 三破産者
- 四被後見人に対して訴訟をし、又はした者
及び並びにその配偶者並びに及び直系血族 - 五行方の知れない者
第二款後見監督人
- 未成年後見監督人の指定
- 第八百四十八条未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。
- 未成年後見監督人の選任
- 第八百四十九条前条の
規定によつて規定により指定した未成年後見監督人がない場合において必要があると認めるときは、家庭裁判所は、未成年被後見人、その親族若しくは未成年後見人の請求によつて、請求により又は職権で、未成年後見監督人を選任することができる。未成年後見監督人の欠けた場合も、同様であるとする。
- 成年後見監督人の選任
- 第八百四十九条の二家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族若しくは成年後見人の請求に
よつて、より又は職権で、成年後見監督人を選任することができる。
- 後見監督人の欠格事由
- 第八百五十条後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
- 後見監督人の職務
- 第八百五十一条後見監督人の職務は、
左の通りである次のとおりとする。- 一後見人の事務を監督すること。
- 二後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
- 三急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
- 四後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
- 委任及び後見人の規定の準用
- 第八百五十二条第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は、後見監督人について準用する。
第三節後見の事務
- 財産の調査及び目録の作成
- 第八百五十三条後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に
著手し着手し、一箇月以内に、その調査を終わり、且つかつ、その目録を調製しなければ作成しなければならない。但しただし、この期間は、家庭裁判所において、これを伸長することができる。 - 2財産の調査及びその目録の
調製作成は、後見監督人があるときは、その立会を以てこれを立会いをもってしなければ、その効力がないを生じない。
- 財産の目録の作成前の権限
- 第八百五十四条後見人は、財産の目録の
調製作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。但し、これをただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
- 後見人の被後見人に対する債権又は債務の申出義務
- 第八百五十五条後見人が、被後見人に対し、債権を有し、又は債務を負う場合において、後見監督人があるときは、財産の調査に
著手する着手する前に、これを後見監督人に申し出なければならない。 - 2後見人が、被後見人に対し債権を有することを
知つて知ってこれを申し出ないときは、その債権を失う。
- 被後見人が包括財産を取得した場合についての準用
- 第八百五十六条前三条の規定は、後見人が就職した後被後見人が包括財産を取得した場合に
これをついて準用する。
- 未成年被後見人の身上の監護に関する権利義務
- 第八百五十七条未成年後見人は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、未成年被後見人を懲戒場に入れ、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。
- 成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮
- 第八百五十八条成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに
当たつて当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
- 財産の管理及び代表
- 第八百五十九条後見人は、被後見人の財産を管理し、
又かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。 - 2
第八百二十四条但書第八百二十四条ただし書の規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
- 成年後見人が数人ある場合の権限の行使等
- 第八百五十九条の二成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
- 2家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
- 3成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
- 成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可
- 第八百五十九条の三成年後見人は、成年被後見人に
代わつて代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
- 利益相反行為
- 第八百六十条第八百二十六条の規定は、後見人に
これをついて準用する。但しただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
- 支出金額の予定及び後見の事務の費用
- 第八百六十一条後見人は、その就職の
初初めにおいて、被後見人の生活、教育又は療養看護及び財産の管理のために毎年費すべき支出すべき金額を予定しなければならない。 - 2後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。
- 後見人の報酬
- 第八百六十二条家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情に
よつてよって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。
- 後見の事務の監督
- 第八百六十三条後見監督人又は家庭裁判所は、
何時でもいつでも、後見人に対し後見の事務の報告若しくは財産の目録の提出を求め、又は後見の事務若しくは被後見人の財産の状況を調査することができる。 - 2家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求に
よつて、より又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見の事務について必要な処分を命ずることができる。
後見監督人の同意を要する行為
- 第八百六十四条後見人が、被後見人に
代わつて代わって営業若しくは第十二条第一項第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
- 第八百六十五条後見人が、前条の規定に違反してし
、又は又は同意を与えた行為は、被後見人又は後見人において、これを後見人が取り消すことができる。この場合においては、第十九条第二十条の規定を準用する。 - 2前項の規定は、第百二十一条
乃至第百二十六条から第百二十六条までの規定の適用を妨げない。
- 被後見人の財産等の譲受けの取消し
- 第八百六十六条後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被後見人は、これを取り消すことができる。この場合においては、
第十九条第二十条の規定を準用する。 - 2前項の規定は、第百二十一条
乃至第百二十六条から第百二十六条までの規定の適用を妨げない。
- 未成年被後見人に代わる親権の行使
- 第八百六十七条未成年後見人は、未成年被後見人に
代わつて代わって親権を行う。 - 2第八百五十三条
乃至第八百五十七条から第八百五十七条まで及び第八百六十一条乃至前条から前条までの規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
- 財産に関する権限のみを有する未成年後見人
- 第八百六十八条親権を行う者が管理権を有しない場合には、未成年後見人は、財産に関する権限のみを有する。
- 委任及び親権の規定の準用
- 第八百六十九条第六百四十四条及び第八百三十条の規定は、後見に
これをついて準用する。
第四節後見の終了
後見の計算
- 第八百七十条後見人の任務が終了したときは、後見人又はその相続人は、二箇月以内にその管理の計算(以下「後見の計算」という。)をしなければならない。
但しただし、この期間は、家庭裁判所において、これを伸長することができる。
- 第八百七十一条後見の計算は、後見監督人があるときは、その
立会を以てこれをする立会いをもってしなければならない。
- 未成年被後見人と未成年後見人等との間の契約等の取消し
- 第八百七十二条未成年被後見人が成年に達した後後見の計算の終了前に、その者と未成年後見人又はその相続人との間
にしたでした契約は、その者においてこれを者が取り消すことができる。その者が未成年後見人又はその相続人に対してした単独行為も、同様であるとする。 - 2
第十九条第二十条及び第百二十一条乃至第百二十六条から第百二十六条までの規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
- 返還金に対する利息の支払等
- 第八百七十三条後見人が被後見人に返還すべき金額及び被後見人が後見人に返還すべき金額には、後見の計算が終了した時から、利息を
つけなければ付さなければならない。 - 2
後見人が後見人は、自己のために被後見人の金銭を消費したときは、その消費の時から、これに利息をつけなければ付さなければならない。なお、この場合において、なお損害があつたあるときは、その賠償の責に任ずる責任を負う。
- 委任の規定の準用
- 第八百七十四条第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、後見に
これをついて準用する。
- 後見に関して生じた債権の消滅時効
- 第八百七十五条第八百三十二条
に定める時効の規定は、後見人又は後見監督人と被後見人との間において後見に関して生じた債権にこれをの消滅時効について準用する。 - 2前項の
時効消滅時効は、第八百七十二条の規定によつてより法律行為を取り消した場合には、その取消取消しの時から、これを起算する。
第五章の二第六章保佐及び補助
第一節保佐
- 保佐の開始
- 第八百七十六条保佐は、保佐開始の審判に
よつてよって開始する。
- 保佐人及び臨時保佐人の選任等
- 第八百七十六条の二家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。
- 2第八百四十三条第二項から第四項まで及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、保佐人について準用する。
- 3保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。
- 保佐監督人
- 第八百七十六条の三家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族若しくは保佐人の請求に
よつて、より又は職権で、保佐監督人を選任することができる。 - 2第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十条、第八百五十一条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は、保佐監督人について準用する。この場合において、第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
- 保佐人に代理権を付与する旨の審判
- 第八百七十六条の四家庭裁判所は、第十一条本文に
掲げる規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によつてよって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。 - 2本人以外の者の請求に
よつてよって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。 - 3家庭裁判所は、第一項に
掲げる規定する者の請求によつてよって、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
- 保佐の事務及び保佐人の任務の終了等
- 第八百七十六条の五保佐人は、保佐の事務を行うに
当たつて当たっては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。 - 2第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条及び第八百六十三条の規定は保佐の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は保佐人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
- 3第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は保佐人の任務が終了した場合について、第八百三十二条の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。
第二節補助
- 補助の開始
- 第八百七十六条の六補助は、補助開始の審判に
よつてよって開始する。
- 補助人及び臨時補助人の選任等
- 第八百七十六条の七家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。
- 2第八百四十三条第二項から第四項まで及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、補助人について準用する。
- 3補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。
- 補助監督人
- 第八百七十六条の八家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求に
よつて、より又は職権で、補助監督人を選任することができる。 - 2第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十条、第八百五十一条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は、補助監督人について準用する。この場合において、第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
- 補助人に代理権を付与する旨の審判
- 第八百七十六条の九家庭裁判所は、
第十四条第一項本文に掲げる第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によつてよって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。 - 2第八百七十六条の四第二項及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。
- 補助の事務及び補助人の任務の終了等
- 第八百七十六条の十第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条、第八百六十三条及び第八百七十六条の五第一項の規定は補助の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は補助人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
- 2第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は補助人の任務が終了した場合について、第八百三十二条の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。
第六章第七章扶養
- 扶養義務者
- 第八百七十七条直系血族及び兄弟姉妹は、
互に互いに扶養をする義務がある。 - 2家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の
外ほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。 - 3前項の規定による審判が
あつたあった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
- 扶養の順位
- 第八百七十八条扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養する
に足りないとき、のに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様であるとする。
- 扶養の程度又は方法
- 第八百七十九条扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
- 扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し
- 第八百八十条扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判が
あつたあった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消取消しをすることができる。
- 扶養請求権の処分の禁止
- 第八百八十一条扶養を受ける権利は、
これを処分することができない。
第五編相続
第一章総則
- 相続開始の原因
- 第八百八十二条相続は、死亡に
よつてよって開始する。
- 相続開始の場所
- 第八百八十三条相続は、被相続人の住所において開始する。
- 相続回復請求権
- 第八百八十四条相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を
知つた知った時から五年間これを行わない行使しないときは、時効によつてよって消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様であるとする。
- 相続財産に関する費用
- 第八百八十五条相続財産に関する費用は、その財産の中から
、これを支弁する。但しただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。 - 2前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺に
よつてよって得た財産を以て、これをもって支弁することを要しない。
第二章相続人
- 相続に関する胎児の権利能力
- 第八百八十六条胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
- 2前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、
これを適用しない。
- 子及びその代襲者等の相続権
- 第八百八十七条被相続人の子は、相続人となる。
- 2被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除に
よつてよって、その相続権を失つた失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。但しただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。 - 3前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除に
よつてよって、その代襲相続権を失つた失った場合にこれをついて準用する。
- 第八百八十八条削除
- 直系尊属及び兄弟姉妹の相続権
- 第八百八十九条
左に掲げる者は、第八百八十七条の規定によつて相続人となるべき者がない場合には、左の順位に従つて相続人となる。次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。第一直系尊属。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。第二兄弟姉妹- 一被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
- 二被相続人の兄弟姉妹
- 2第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合に
これをついて準用する。
- 配偶者の相続権
- 第八百九十条被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、
前三条第八百八十七条又は前条の規定によつてより相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
- 相続人の欠格事由
- 第八百九十一条
左に次に掲げる者は、相続人となることができない。- 一故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に
在るある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者 - 二被相続人の殺害されたことを
知つて知って、これを告発せず、又は告訴しなかつた告訴しなかった者。但しただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であつたあったときは、この限りでない。 - 三詐欺又は強迫に
よつてよって、被相続人が相続に関する遺言をし、これを、撤回し、取り消し、又はこれを又は変更することを妨げた者 - 四詐欺又は強迫に
よつてよって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを、撤回させ、取り消させ、又はこれを又は変更させた者 - 五相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
- 一故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に
- 推定相続人の廃除
- 第八百九十二条遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行が
あつたあったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
- 遺言による推定相続人の廃除
- 第八百九十三条被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく
家庭裁判所に廃除の請求をしなければ、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、廃除はその推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼつてさかのぼってその効力を生ずる。
- 推定相続人の廃除の取消し
- 第八百九十四条被相続人は、
何時でもいつでも、推定相続人の廃除の取消取消しを家庭裁判所に請求することができる。 - 2前条の規定は、
廃除の取消にこれを推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
- 推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理
- 第八百九十五条推定相続人の廃除又はその
取消取消しの請求があつたあった後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によつてよって、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。廃除の推定相続人の廃除の遺言があつたあったときも、同様であるとする。 - 2
家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が遺産の管理人を選任した場合について準用する。
第三章相続の効力
第一節総則
- 相続の一般的効力
- 第八百九十六条相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。
但しただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
- 祭祀に関する権利の承継
- 第八百九十七条系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、
慣習に従つて慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを者が承継する。但しただし、被相続人の指定に従つて従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。 - 2前項本文の場合において慣習が
明か明らかでないときは、前項の同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
共同相続の効力
- 第八百九十八条相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
- 第八百九十九条各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
第二節相続分
- 法定相続分
- 第九百条同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、
左の規定に従う次の各号の定めるところによる。- 一子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
- 二配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
- 三配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
- 四子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
但しただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
- 代襲相続人の相続分
- 第九百一条第八百八十七条第二項又は第三項の規定に
よつてより相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであつたあったものと同じであるとする。但しただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであつたあった部分について、前条の規定に従つて従ってその相続分を定める。 - 2前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定に
よつてより兄弟姉妹の子が相続人となる場合にこれをついて準用する。
- 遺言による相続分の指定
- 第九百二条被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
但しただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。 - 2被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定に
よつてこれをより定める。
特別受益者の相続分
- 第九百三条共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻
、養子縁組若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定によつてより算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額を以て控除した残額をもってその者の相続分とする。 - 2遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
- 3被相続人が前二項の規定と
異なつた異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に反しない違反しない範囲内で、その効力を有する。
- 第九百四条前条に
掲げる規定する贈与の価額は、受贈者の行為によつてよって、その目的たる目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があつたあったときであっても、相続開始の当時時においてなお原状のままで在るあるものとみなしてこれを定める。
- 寄与分
- 第九百四条の二共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に
つきついて特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定によつてより算定した相続分に寄与分を加えた額をもつてもってその者の相続分とする。 - 2前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
- 3寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を
控除した額控除した残額を超えることができない。 - 4第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求が
あつたあった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。
- 相続分の取戻権
- 第九百五条共同相続人の一人が
分割遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。 - 2前項
に定めるの権利は、一箇月以内にこれを行わなければ行使しなければならない。
第三節遺産の分割
- 遺産の分割の基準
- 第九百六条遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
- 遺産の分割の協議又は審判等
- 第九百七条共同相続人は、
第九百八条次条の規定によつてより被相続人が遺言で禁じた場合を除く外除き、何時でもいつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。 - 2遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
- 3前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
- 遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止
- 第九百八条被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない
期間内期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
- 遺産の分割の効力
- 第九百九条遺産の分割は、相続開始の時に
さかのぼつてさかのぼってその効力を生ずる。但しただし、第三者の権利を害することがことはできない。
- 相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権
- 第九百十条相続の開始後認知に
よつてよって相続人となつたなった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
- 共同相続人間の担保責任
- 第九百十一条各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の
責に任ずる責任を負う。
- 遺産の分割によって受けた債権についての担保責任
- 第九百十二条各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が
分割によつて遺産の分割によって受けた債権について、分割の当時その分割の時における債務者の資力を担保する。 - 2弁済期に至らない債権及び
停止条件附停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
- 資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担
- 第九百十三条担保の
責に任ずる責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各々それぞれその相続分に応じてこれを分担する。但しただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
- 遺言による担保責任の定め
- 第九百十四条前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、
これを適用しない。
第四章相続の承認及び放棄
第一節総則
相続の承認又は放棄をすべき期間
- 第九百十五条相続人は、自己のために相続の開始が
あつたあったことを知つた知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但しただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によつてよって、家庭裁判所において、これを伸長することができる。 - 2相続人は、
承認相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
- 第九百十六条相続人が
承認相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があつたあったことを知つた知った時から、これを起算する。
- 第九百十七条相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が無能力者のために相続の開始が
あつたあったことを知つた知った時から、これを起算する。
- 相続財産の管理
- 第九百十八条相続人は、その固有財産に
おけるとおけるのと同一の注意を以てもって、相続財産を管理しなければならない。但しただし、承認相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。 - 2家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求に
よつてよって、何時でもいつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。 - 3
家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
- 相続の承認及び放棄の撤回及び取消し
- 第九百十九条
承認相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、これを取り消す撤回することができない。 - 2
前項の規定は、第一編及び前編の規定によつて承認又は放棄の取消をすることを妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から六箇月間これを行わないときは、時効によつて消滅する。承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様である。前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。 - 3前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
- 4
前項第二項の規定によつてより限定承認又は放棄の取消相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
第二節承認
第二節相続の承認
第一款単純承認
- 単純承認の効力
- 第九百二十条
相続人が相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
- 法定単純承認
- 第九百二十一条
左に次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。- 一相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
但しただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。 - 二相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は
放棄をしなかつた相続の放棄をしなかったとき。 - 三相続人が、限定承認
又は放棄又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録相続財産の目録中に記載しなかつた記載しなかったとき。但しただし、その相続人が放棄相続の放棄をしたことによつてよって相続人となつたなった者が承認相続の承認をした後は、この限りでない。
- 一相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
第二款限定承認
- 限定承認
- 第九百二十二条相続人は、相続に
よつてよって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、承認相続の承認をすることができる。
- 共同相続人の限定承認
- 第九百二十三条相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
- 限定承認の方式
- 第九百二十四条
相続人が相続人は、限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、財産目録を調製してこれを相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
- 限定承認をしたときの権利義務
- 第九百二十五条相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、
消滅しなかつた消滅しなかったものとみなす。
- 限定承認者による管理
- 第九百二十六条限定承認者は、その固有財産に
おけるとおけるのと同一の注意を以てもって、相続財産の管理を継続しなければならない。 - 2第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項
、第二項及び及び第二項並びに第九百十八条第二項、第三項及び第三項の規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
- 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告
- 第九百二十七条限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、
一切すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。 - 2第七十九条第二項及び第三項の規定は、前項の場合に
これをついて準用する。
- 公告期間満了前の弁済の拒絶
- 第九百二十八条限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
- 公告期間満了後の弁済
- 第九百二十九条第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産を
以てもって、その期間内に申し出た債権者同項の申出をした相続債権者その他知れた債権者知れている相続債権者に、各々それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但しただし、優先権を有する債権者の権利を害することがことはできない。
- 期限前の債務等の弁済
- 第九百三十条限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、前条の規定に
よつてこれを弁済しなければ従って弁済をしなければならない。 - 2
条件附条件付きの債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従つて、これを弁済しなければ従って弁済をしなければならない。
- 受遺者に対する弁済
- 第九百三十一条限定承認者は、前二条の規定に
よつて従って各債権者相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。
- 弁済のための相続財産の換価
- 第九百三十二条前三条の規定に
従つて従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付しなければ付さなければならない。但しただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。
- 相続債権者及び受遺者の換価手続への参加
- 第九百三十三条相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合においては、第二百六十条第二項の規定を準用する。
- 不当な弁済をした限定承認者の責任等
- 第九百三十四条
限定承認者が限定承認者は、第九百二十七条に定めるの公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内にある債権者相続債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによつてよって他の債権者他の相続債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなつたできなくなったときは、これによつてよって生じた損害を賠償する責に任ずる責任を負う。第九百二十九条乃至第九百三十一条から第九百三十一条までの規定に違反して弁済をしたときも、同様であるとする。 - 2前項の規定は、情を
知つて知って不当に弁済を受けた債権者相続債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。 - 3第七百二十四条の規定は、前二項の場合
にも、これを適用するについて準用する。
- 公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者
- 第九百三十五条第九百二十七条第一項の期間内に
申し出なかつた債権者同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかつた知れなかったものは、残余財産についてのみその権利を行う行使することができる。但しただし、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。
- 相続人が数人ある場合の相続財産の管理人
- 第九百三十六条相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。
- 2
管理人前項の相続財産の管理人は、相続人のために、これに代わつて代わって、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。 - 3第九百二十六条
乃至前条から前条までの規定は、管理人にこれを第一項の相続財産の管理人について準用する。但し、第九百二十七条第一項に定める公告をする期間は、管理人の選任があつた後十日以内とする。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の管理人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。
- 法定単純承認の事由がある場合の相続債権者
- 第九百三十七条限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産を
以てもって弁済を受けることができなかつたできなかった債権額について、その者当該共同相続人に対し、その相続分に応じて権利を行う行使することができる。
第三節放棄
第三節相続の放棄
- 相続の放棄の方式
- 第九百三十八条相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
- 相続の放棄の効力
- 第九百三十九条相続の放棄をした者は、その相続に関しては、
初初めから相続人とならなかつたならなかったものとみなす。
- 相続の放棄をした者による管理
- 第九百四十条相続の放棄をした者は、その放棄に
よつてよって相続人となつたなった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるとおけるのと同一の注意を以てもって、その財産の管理を継続しなければならない。 - 2第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項
、第二項及び及び第二項並びに第九百十八条第二項、第三項及び第三項の規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
第五章財産の分離
第五章財産分離
- 相続債権者又は受遺者の請求による財産分離
- 第九百四十一条相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の
満了後でも満了後も、同様であるとする。 - 2家庭裁判所が前項の請求に
よつて財産の分離よって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があつたあったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
- 財産分離の効力
- 第九百四十二条財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定に
よつてより配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先だつて先立って弁済を受ける。
- 財産分離の請求後の相続財産の管理
- 第九百四十三条財産分離の請求が
あつたあったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。 - 2
家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
- 財産分離の請求後の相続人による管理
- 第九百四十四条相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求が
あつたあったときは、以後、その固有財産におけるとおけるのと同一の注意を以てもって、相続財産の管理をしなければならない。但しただし、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任したときは、この限りでない。 - 2第六百四十五条
乃至第六百四十七条及びから第六百四十七条まで並びに第六百五十条第一項、第二項及び第二項の規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
- 不動産についての財産分離の対抗要件
- 第九百四十五条
財産の分離財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、これを第三者に対抗することができない。
- 物上代位の規定の準用
- 第九百四十六条第三百四条の規定は、財産分離の場合に
これをついて準用する。
- 相続債権者及び受遺者に対する弁済
- 第九百四十七条相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
- 2財産分離の請求が
あつたあったときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産を以てもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした債権者及び相続債権者及び受遺者に、各々それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但しただし、優先権を有する債権者の権利を害することがことはできない。 - 3第九百三十条
乃至第九百三十四条から第九百三十四条までの規定は、前項の場合にこれをついて準用する。
- 相続人の固有財産からの弁済
- 第九百四十八条財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産を
以てもって全部の弁済を受けることができなかつたできなかった場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行う行使することができる。この場合においては、相続人の債権者は、その者に先だつて先立って弁済を受けることができる。
- 財産分離の請求の防止等
- 第九百四十九条相続人は、その固有財産を
以てもって相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。但しただし、相続人の債権者が、これによつてよって損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。
- 相続人の債権者の請求による財産分離
- 第九百五十条相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、
その相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。 - 2第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条
乃至第九百三十四条から第九百三十四条まで、第九百四十三条乃至第九百四十五条から第九百四十五条まで及び第九百四十八条の規定は、前項の場合にこれをについて準用する。但しただし、第九百二十七条に定めるの公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がこれをしなければならない。
第六章相続人の不存在
- 相続財産法人の成立
- 第九百五十一条相続人のあることが
明か明らかでないときは、相続財産は、これを法人とする。
- 相続財産の管理人の選任
- 第九百五十二条前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求に
よつてよって、相続財産の管理人を選任しなければならない。 - 2
家庭裁判所前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく管理人の選任これを公告しなければならない。
- 不在者の財産の管理人に関する規定の準用
- 第九百五十三条第二十七条
乃至第二十九条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人にこれを(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
- 相続財産の管理人の報告
- 第九百五十四条
管理人相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、これその請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
- 相続財産法人の不成立
- 第九百五十五条相続人のあることが
明かになつた明らかになったときは、法人第九百五十一条の法人は、存立しなかつた成立しなかったものとみなす。但し、管理人ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
- 相続財産の管理人の代理権の消滅
- 第九百五十六条
管理人相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。 - 2前項の場合には、
管理人相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
- 相続債権者及び受遺者に対する弁済
- 第九百五十七条第九百五十二条第二項
に定めるの公告があつたあった後二箇月以内に相続人のあることが明かにならなかつた明らかにならなかったときは、管理人相続財産の管理人は、遅滞なく一切、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。 - 2第七十九条第二項
、第三項及び及び第三項並びに第九百二十八条乃至第九百三十五条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合にこれをついて準用する。但し、第九百三十二条但書の規定は、この限りでない。
- 相続人の捜索の公告
- 第九百五十八条前条第一項の期間の満了後、なお
、相続人の相続人のあることが明か明らかでないときは、家庭裁判所は、管理人相続財産の管理人又は検察官の請求によつてよって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、六箇月を下ることができない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
- 権利を主張する者がない場合
- 第九百五十八条の二前条の期間内に相続人
であるとしての権利を主張する者がないときは、相続人並びに管理人相続財産の管理人に知れなかつた知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行う行使することができない。
- 特別縁故者に対する相続財産の分与
- 第九百五十八条の三前条の場合において
相当、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつたあった者の請求によつてよって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。 - 2前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内に
、これをしなければならない。
- 残余財産の国庫への帰属
- 第九百五十九条前条の規定に
よつて処分されなかつたより処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。
第七章遺言
第一節総則
- 遺言の方式
- 第九百六十条遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、
これをすることができない。
遺言能力
- 第九百六十一条
満十五歳十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
- 第九百六十二条
第四条第五条、第九条、第十二条第十三条及び第十六条第十七条の規定は、遺言には、これをについては、適用しない。
- 第九百六十三条遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。
- 包括遺贈及び特定遺贈
- 第九百六十四条遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。
但しただし、遺留分に関する規定に違反することができない。
- 相続人に関する規定の準用
- 第九百六十五条第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者に
これをついて準用する。
- 被後見人の遺言の制限
- 第九百六十六条被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
- 2前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、
これを適用しない。
第二節遺言の方式
第一款普通の方式
- 普通の方式による遺言の種類
- 第九百六十七条遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書に
よつてこれをよってしなければならない。但しただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。
- 自筆証書遺言
- 第九百六十八条自筆証書に
よつてよって遺言をするには、遺言者が、その全文、日附日付及び氏名を自書し、これに印をおさなければ押さなければならない。 - 2自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を
附記して付記して特にこれに署名し、且つかつ、その変更の場所に印をおさなければ押さなければ、その効力がないを生じない。
- 公正証書遺言
- 第九百六十九条公正証書に
よつてよって遺言をするには、次の次に掲げる方式に従わなければならない。- 一証人二人以上の立会いがあること。
- 二遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
- 三公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に、又は閲覧させること。
- 四遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
- 五公証人が、その証書は
前四号前各号に掲げる方式に従つて作つた従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
- 公正証書遺言の方式の特則
- 第九百六十九条の二口がきけない者が公正証書に
よつてよって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書申述又は自書」とする。 - 2前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
- 3公証人は、前二項に定める方式に
従つて従って公正証書を作つた作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
- 秘密証書遺言
- 第九百七十条秘密証書に
よつてよって遺言をするには、左の次に掲げる方式に従わなければならない。- 一遺言者が、その証書に署名し、印を
おす押すこと。 - 二遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章を
以てもってこれに封印すること。 - 三遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
- 四公証人が、その証書を提出した
日附日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印をおす押すこと。
- 一遺言者が、その証書に署名し、印を
- 2第九百六十八条第二項の規定は、秘密証書による遺言に
これをついて準用する。
- 方式に欠ける秘密証書遺言の効力
- 第九百七十一条秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものが
あつてあっても、第九百六十八条の方式に定める方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。
- 秘密証書遺言の方式の特則
- 第九百七十二条口がきけない者が秘密証書に
よつてよって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。 - 2前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
- 3第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。
- 成年被後見人の遺言
- 第九百七十三条成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
- 2遺言に
立ち会つた立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかつたなかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書によつて遺言をする場合にはよる遺言にあっては、その封紙に右のその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
- 証人及び立会人の欠格事由
- 第九百七十四条次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
- 一未成年者
- 二推定相続人
、受遺者及びその及び受遺者並びにこれらの配偶者並びに及び直系血族 - 三公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び
雇人使用人
- 共同遺言の禁止
- 第九百七十五条遺言は、二人以上の者が同一の証書で
これをすることができない。
第二款特別の方式
- 死亡の危急に迫った者の遺言
- 第九百七十六条疾病その他の事由に
よつてよって死亡の危急に迫つた迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもつてもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。 - 2口がきけない者が前項の規定に
よつてより遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。 - 3第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
- 4前三項の規定に
よつてよりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がないを生じない。 - 5家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。
- 伝染病隔離者の遺言
- 第九百七十七条伝染病のため行政処分に
よつてよって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会を以て立会いをもって遺言書を作ることができる。
- 在船者の遺言
- 第九百七十八条船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の
立会を以て立会いをもって遺言書を作ることができる。
- 船舶遭難者の遺言
- 第九百七十九条
船舶遭難の船舶が遭難した場合において、船舶中に在つて当該船舶中に在って死亡の危急に迫つた迫った者は、証人二人以上の立会を以て立会いをもって口頭で遺言をすることができる。 - 2口がきけない者が前項の規定に
よつてより遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。 - 3前二項の規定に
従つて従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がないを生じない。 - 4第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。
- 遺言関係者の署名及び押印
- 第九百八十条第九百七十七条及び第九百七十八条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を
おさなければ押さなければならない。
- 署名又は押印が不能の場合
- 第九百八十一条第九百七十七条
乃至第九百七十九条から第九百七十九条までの場合において、署名又は印をおす押すことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を附記しなければ付記しなければならない。
- 普通の方式による遺言の規定の準用
- 第九百八十二条第九百六十八条第二項及び第九百七十三条
乃至第九百七十五条から第九百七十五条までの規定は、第九百七十六条乃至前条から前条までの規定による遺言にこれをついて準用する。
- 特別の方式による遺言の効力
- 第九百八十三条第九百七十六条
乃至前条の規定によつてから前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によつて方式によって遺言をすることができるようになつたなった時から六箇月間生存するときは、その効力がないを生じない。
- 外国に在る日本人の遺言の方式
- 第九百八十四条日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書に
よつてよって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事がこれを行う。
第三節遺言の効力
- 遺言の効力の発生時期
- 第九百八十五条遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
- 2遺言に停止条件を
附した付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
- 遺贈の放棄
- 第九百八十六条受遺者は、遺言者の死亡後、
何時でもいつでも、遺贈の放棄をすることができる。 - 2遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時に
さかのぼつてさかのぼってその効力を生ずる。
- 受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告
- 第九百八十七条
遺贈義務者その他遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負う者をいう。以下この節において同じ。)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定め定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨を受遺者に催告するの催告をすることができる。若しこの場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。
- 受遺者の相続人による遺贈の承認又は放棄
- 第九百八十八条受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、遺贈の承認又は放棄をすることができる。
但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 遺贈の承認及び放棄の撤回及び取消し
- 第九百八十九条遺贈の承認及び放棄は、
これを取り消す撤回することができない。 - 2第九百十九条第二項及び第三項の規定は、遺贈の承認及び放棄に
これをついて準用する。
- 包括受遺者の権利義務
- 第九百九十条包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
- 受遺者による担保の請求
- 第九百九十一条受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。
停止条件附停止条件付きの遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様である同様とする。
- 受遺者による果実の取得
- 第九百九十二条受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。
但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 遺贈義務者による費用の償還請求
- 第九百九十三条
遺贈義務者第二百九十九条の規定は、遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を出したときは、第二百九十九条の規定を支出した場合について準用する。 - 2果実を収取するために
出した支出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。
- 受遺者の死亡による遺贈の失効
- 第九百九十四条遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
- 2
停止条件附停止条件付きの遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様であるとする。但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 遺贈の無効又は失効の場合の財産の帰属
- 第九百九十五条遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄に
よつてよってその効力がなくなつた効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであつたあったものは、相続人に帰属する。但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
相続財産に属しない権利の遺贈
- 第九百九十六条遺贈は、その
目的たる目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかつた属しなかったときは、その効力を生じない。但しただし、その権利が相続財産に属すると属しないと属するかどうかにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認むべき認められるときは、この限りでない。
第九百九十七条相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条但書の規定によつて有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得してこれを受遺者に移転する義務を負う。若し、これを取得することができないか、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、その価額を弁償しなければならない。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 第九百九十七条相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書の規定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義務を負う。
- 2前項の場合において、同項に規定する権利を取得することができないとき、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 不特定物の遺贈義務者の担保責任
- 第九百九十八条不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の
責に任ずる責任を負う。 - 2
前項の不特定物を遺贈の目的とした場合において、物に瑕疵があつたあったときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物を以てもってこれに代えなければならない。
- 遺贈の物上代位
- 第九百九十九条遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失に
よつてよって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。 - 2遺贈の目的物が、他の物と
附合し付合し、又は混和した場合において、遺言者が第二百四十三条乃至第二百四十五条から第二百四十五条までの規定によつてより合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となつたなったときは、その全部の所有権又は共有権持分を遺贈の目的としたものと推定する。
- 第三者の権利の目的である財産の遺贈
- 第千条遺贈の
目的たる目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。但しただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
- 債権の遺贈の物上代位
- 第千一条債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、
且つかつ、その受け取つた受け取った物が、なお、なお相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定する。 - 2金銭を目的とする債権
についてを遺贈の目的とした場合においては、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときであっても、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。
- 負担付遺贈
- 第千二条
負担附遺贈負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責に任ずる責任を負う。 - 2受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき
者が、者は、自ら受遺者となることができる。但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 負担付遺贈の受遺者の免責
- 第千三条
負担附遺贈負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴によつて訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じてその負担した、その負担した義務を免かれる免れる。但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
第四節遺言の執行
- 遺言書の検認
- 第千四条遺言書の保管者は、相続の開始を
知つた知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様であるとする。 - 2前項の規定は、公正証書による遺言については、
これを適用しない。 - 3封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の
立会を以てしなければ、これを立会いがなければ、開封することができない。
- 過料
- 第千五条前条の規定に
よつてより遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処せられる処する。
- 遺言執行者の指定
- 第千六条遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
- 2遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
- 3遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
- 遺言執行者の任務の開始
- 第千七条遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
- 遺言執行者に対する就職の催告
- 第千八条相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を
定め定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨を遺言執行者に催告するの催告をすることができる。若しこの場合において、遺言執行者が、その期間内に、相続人に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
- 遺言執行者の欠格事由
- 第千九条未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
- 遺言執行者の選任
- 第千十条遺言執行者が
、ないないとき、又はなくなつたなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によつてよって、これを選任することができる。
- 相続財産の目録の作成
- 第千十一条遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を
調製して、これを作成して、相続人に交付しなければならない。 - 2遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その
立会を以て財産目録を調製し立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを調製させなければ作成させなければならない。
- 遺言執行者の権利義務
- 第千十二条遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
- 2第六百四十四条
乃至第六百四十七条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者にこれをついて準用する。
- 遺言の執行の妨害行為の禁止
- 第千十三条遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
- 特定財産に関する遺言の執行
- 第千十四条前三条の規定は、遺言が
特定財産相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみこれを適用する。
- 遺言執行者の地位
- 第千十五条遺言執行者は、
これを相続人の代理人とみなす。
- 遺言執行者の復任権
- 第千十六条遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。
但しただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。 - 2遺言執行者が
前項但書前項ただし書の規定によつてより第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条に定める規定する責任を負う。
- 遺言執行者が数人ある場合の任務の執行
- 第千十七条
数人の遺言執行者が遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数でこれを決する。但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。 - 2各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
- 遺言執行者の報酬
- 第千十八条家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情に
よつてよって遺言執行者の報酬を定めることができる。但しただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。 - 2
遺言執行者が報酬を受けるべき場合には、第六百四十八条第二項及び第三項の規定を準用する。第六百四十八条第二項及び第三項の規定は、遺言執行者が報酬を受けるべき場合について準用する。
- 遺言執行者の解任及び辞任
- 第千十九条遺言執行者がその任務を
怠つた怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。 - 2遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
- 委任の規定の準用
- 第千二十条第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合に
これをついて準用する。
- 遺言の執行に関する費用の負担
- 第千二十一条遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。
但しただし、これによつてよって遺留分を減ずることができない。
第五節遺言の取消
第五節遺言の撤回及び取消し
- 遺言の撤回
- 第千二十二条遺言者は、
何時でもいつでも、遺言の方式に従つて従って、その遺言の全部又は一部を取り消す撤回することができる。
- 前の遺言と後の遺言との抵触等
- 第千二十三条
前の遺言と前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消した撤回したものとみなす。 - 2前項の規定は、
遺言と遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれをついて準用する。
- 遺言書又は遺贈の目的物の破棄
- 第千二十四条遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を
取り消した撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様であるとする。
- 撤回された遺言の効力
- 第千二十五条前三条の規定に
よつて取り消されたより撤回された遺言は、その取消の行為が撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至つたときでも至ったときであっても、その効力を回復しない。但しただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
- 遺言の撤回権の放棄の禁止
- 第千二十六条遺言者は、その
遺言の取消権遺言を撤回する権利を放棄することができない。
- 負担付遺贈に係る遺言の取消し
- 第千二十七条
負担附遺贈負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行を催告し、若しの催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、遺言の取消その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
第八章遺留分
- 遺留分の帰属及びその割合
- 第千二十八条兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、
左の額次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。一直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一二その他の場合には、被相続人の財産の二分の一- 一直系尊属のみが相続人である場合被相続人の財産の三分の一
- 二前号に掲げる場合以外の場合被相続人の財産の二分の一
遺留分の算定
- 第千二十九条遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を
加え、その中加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。 - 2
条件附条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した選任した鑑定人の評価に従つて従って、その価格を定める。
- 第千三十条贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定に
よつてよりその価額を算入する。当時者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つて知って贈与をしたときは、一年前一年前の日より前にしたものでもものについても、同様であるとする。
- 遺贈又は贈与の減殺請求
- 第千三十一条遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を
保全するに保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に掲げる規定する贈与の減殺を請求することができる。
- 条件付権利等の贈与又は遺贈の一部の減殺
- 第千三十二条
条件附条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第千二十九条第二項の規定によつてより定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。
- 贈与と遺贈の減殺の順序
- 第千三十三条贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、
これを減殺することができない。
- 遺贈の減殺の割合
- 第千三十四条遺贈は、その目的の価額の割合に応じて
これを減殺する。但しただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 贈与の減殺の順序
- 第千三十五条贈与の減殺は、後の贈与から
始め、順次に前の贈与に及ぶ順次前の贈与に対してする。
- 受贈者による果実の返還
- 第千三十六条受贈者は、その返還すベき財産の
外、なおほか、減殺の請求があつたあった日以後の果実を返還しなければならない。
- 受贈者の無資力による損失の負担
- 第千三十七条減殺を受けるべき受贈者の無資力に
よつてよって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
- 負担付贈与の減殺請求
- 第千三十八条
負担附贈与負担付贈与は、その目的の価額の中からから負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。
- 不相当な対価による有償行為
- 第千三十九条不相当な対価を
以てもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つて知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
- 受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等
- 第千四十条減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。
但しただし、譲受人が譲渡の当時時において遺留分権利者に損害を加えることを知つた知っていたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。 - 2前項の規定は、受贈者が贈与の
目的の上に目的につき権利を設定した場合にこれをついて準用する。
- 遺留分権利者に対する価額による弁償
- 第千四十一条受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を
免かれる免れることができる。 - 2前項の規定は、
前条第一項但書前条第一項ただし書の場合にこれをついて準用する。
- 減殺請求権の期間の制限
- 第千四十二条減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈が
あつたあったことを知つた知った時から、一年間これを行わない一年間行使しないときは、時効によつてよって消滅する。相続の開始の開始の時から十年を経過したときも、同様であるとする。
- 遺留分の放棄
- 第千四十三条相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
- 2共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
- 代襲相続及び相続分の規定の準用
- 第千四十四条第八百八十七条第二項
、第三項及び第三項、第九百条、第九百一条、第九百三条及び並びに第九百四条の規定は、遺留分にこれをついて準用する。
附則昭和二十二年法律第二百二十二号
- 第一條この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
- 第二條明治三十五年法律第三十七号は、これを廃止する。
- 第三條この附則で、新法とは、この法律による改正後の民法をいい、旧法とは、從前の民法をいい、應急措置法とは、昭和二十二年法律第七十四号をいう。
- 第四條新法は、別段の規定のある場合を除いては、新法施行前に生じた事項にもこれを適用する。但し、旧法及び應急措置法によつて生じた効力を妨げない。
- 第五條應急措置法施行前に妻が旧法第十四條第一項の規定に違反してした行爲は、これを取り消すことができない。
- 第十四條妻カ左ニ掲ケタル行爲ヲ爲スニハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
- 一第十二條第一項第一號乃至第六號ニ掲ケタル行爲ヲ爲スコト
- 二贈與若クハ遺贈ヲ受諾シ又ハ之ヲ拒絶スルコト
- 三身軆ニ覊絆ヲ受クヘキ契約ヲ爲スコト
- 前項ノ規定ニ反スル行爲ハ之ヲ取消スコトヲ得
- 第十二條準禁治產者カ左ニ掲ケタル行爲ヲ爲スニハ其保佐人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
- 一元本ヲ領收シ又ハ之ヲ利用スルコト
- 二借財又ハ保證ヲ爲スコト
- 三不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル權利ノ得喪ヲ目的トスル行爲ヲ爲スコト
- 四訴訟行爲ヲ爲スコト
- 五贈與、和解又ハ仲裁契約ヲ爲スコト
- 六相續ヲ承認シ又ハ之ヲ抛棄スルコト
- 七贈與若クハ遺贈ヲ拒絶シ又ハ負擔附ノ贈與若クハ遺贈ヲ受諾スルコト
- 八新築、改築、增築又ハ大修繕ヲ爲スコト
- 九第六百二條ニ定メタル期間ヲ超ユル賃貸借ヲ爲スコト
- 裁判所ハ場合ニ依リ準禁治產者カ前項ニ掲ケサル行爲ヲ爲スニモ亦其保佐人ノ同意アルコトヲ要スル旨ヲ宣告スルコトヲ得
- 前二項ノ規定ニ反スル行爲ハ之ヲ取消スコトヲ得
- 第六條應急措置法施行前にした隠居が旧法によつて取り消すことができる場合には、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。この場合には、旧法第七百六十條の規定を適用する。
- 第七百六十條隱居ノ取消前ニ家督相續人ノ債權者ト爲リタル者ハ其取消ニ因リテ戶主タル者ニ對シテ辨濟ノ請求ヲ爲スコトヲ得但家督相續人ニ對スル請求ヲ妨ケス
- 債權者カ債權取得ノ當時隱居取消ノ原因ノ存スルコトヲ知リタルトキハ家督相續人ニ對シテノミ辨濟ノ請求ヲ爲スコトヲ得家督相續人カ家督相續前ヨリ負擔セル債務及ヒ其一身ニ專屬スル債務ニ付キ亦同シ
- 第七條應急措置法施行前に隠居又は入夫婚姻による戶主権の喪失があつた場合には、なお、旧法第七百六十一條の規定を適用する。
- 第七百六十一條隱居又ハ入夫婚姻ニ因ル戶主權ノ喪失ハ前戶主又ハ家督相續人ヨリ前戶主ノ債權者及ヒ債務者ニ其通知ヲ爲スニ非サレハ之ヲ以テ其債權者及ヒ債務者ニ對抗スルコトヲ得ス
- 第八條新法施行前にした婚姻が旧法によつて取り消すことができる場合でも、その取消の原因である事項が新法に定めてないときは、その婚姻は、これを取り消すことができない。
- 第九條新法第七百六十四條において準用する新法第七百四十七條第二項の期間は、当事者が、新法施行前に、詐欺を発見し、又は强迫を免かれた場合には、新法施行の日から、これを起算する。
- 第十條日本國憲法施行後新法施行前に離婚した者の一方は、新法第七百六十八條の規定に從い相手方に対して財產の分與を請求することができる。
- 前項の規定は、婚姻の取消についてこれを準用する。
- 第十一條新法施行前に生じた事実を原因とする離婚の請求については、なお、從前の例による。
- 新法第七百七十條第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
- 第十二條應急措置法施行前に未成年の子が旧法第七百三十七條又は第七百三十八條の規定によつて父又は母の家に入つた場合には、その子は、成年に達した時から一年以内に從前の氏に復することができる。その子が新法施行前に成年に達した場合において、新法施行後一年以内も、同様である。
- 第七百三十七條戶主ノ親族ニシテ他家ニ在ル者ハ戶主ノ同意ヲ得テ其家族ト爲ルコトヲ得但其者カ他家ノ家族タルトキハ其家ノ戶主ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
- 前項ニ揭ケタル者カ未成年者ナルトキハ親權ヲ行フ父若クハ母又ハ後見人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
- 第七百三十八條婚姻又ハ養子緣組ニ因リテ他家ニ入リタル者カ其配偶者又ハ養親ノ親族ニ非サル自己ノ親族ヲ婚家又ハ養家ノ家族ト爲サント欲スルトキハ前條ノ規定ニ依ル外其配偶者又ハ養親ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
- 婚家又ハ養家ヲ去リタル者カ其家ニ在ル自己ノ直系卑屬ヲ自家ノ家族ト爲サント欲スルトキ亦同シ
- 第十三條第八條、第九條及び第十一條の規定は、養子緣組についてこれを準用する。
- 第十四條新法施行の際、現に、婚姻中でない父母が、共同して未成年の子に対して親権を行つている場合には、新法施行後も、引き続き共同して親権を行う。但し、父母は、協議でその一方を親権者と定めることができる。
- 前項但書の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によつて協議に代わる審判をすることができる。
- 新法第八百十九條第六項の規定は、第一項但書又は前項の規定によつて親権者が定められた場合にこれを準用する。
- 第十五條應急措置法施行前に、親権を行う母が、旧法第八百八十六條の規定に違反してし、又は同意を與えた行爲は、これを取り消すことができない。
- 第八百八十六條親權ヲ行フ母カ未成年ノ子ニ代ハリテ左ニ揭ケタル行爲ヲ爲シ又ハ子ノ之ヲ爲スコトニ同意スルニハ親族會ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
- 一營業ヲ爲スコト
- 二借財又ハ保證ヲ爲スコト
- 三不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル權利ノ喪失ヲ目的トスル行爲ヲ爲スコト
- 四不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル和解又ハ仲裁契約ヲ爲スコト
- 五相續ヲ抛棄スルコト
- 六贈與又ハ遺贈ヲ拒絶スルコト
- 第十六條第二十一條の規定は、應急措置法施行前に親権を行つていた継父、継母又は嫡母についてこれを準用する。
- 第十七條新法施行前に親族会員と親権に服した子との間に財產の管理について生じた債権については、なお、旧法第八百九十四條の規定を適用する。
- 第八百九十四條親權ヲ行ヒタル父若クハ母又ハ親族會員ト其子トノ間ニ財產ノ管理ニ付テ生シタル債權ハ其管理權消滅ノ時ヨリ五年間之ヲ行ハサルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
- 子カ未タ成年ニ達セサル間ニ管理權カ消滅シタルトキハ前項ノ期間ハ其子カ成年ニ達シ又ハ後任ノ法定代理人カ就職シタル時ヨリ之ヲ起算ス
- 第十八條新法施行前に母が旧法の規定によつて子の財產の管理を辞した場合において、新法施行の際その子のためにまだ後見が開始していないときは、その辞任は、新法施行後は、その効力を有しない。
- 第十九條新法施行の際現に旧法第九百二條の規定によつて父母の一方が後見人であるとき、又は旧法第九百四條の規定によつて選任された後見人があるときは、その後見人は、新法施行のため、当然にはその地位を失うことはない。但し、新法施行によつて後見が終了し、又は新法による法定後見人があるときは、当然その地位を失う。
- 第九百二條親權ヲ行フ父又ハ母ハ禁治產者ノ後見人ト爲ル
- 妻カ禁治產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ夫其後見人ト爲ル夫カ後見人タラサルトキハ前項ノ規定ニ依ル
- 夫カ禁治產ノ宣告ヲ受ケタルトキハ妻其後見人ト爲ル妻カ後見人タラサルトキ又ハ夫カ未成年者ナルトキハ第一項ノ規定ニ依ル
- 第九百四條前三條ノ規定ニ依リテ後見人タル者アラサルトキハ後見人ハ親族會之ヲ選任ス
- 第二十條前條の規定は、後見監督人及び保佐人についてこれを準用する。
- 第二十一條新法施行前に、後見人が、旧法第九百二十九條の規定に違反してし、又は同意を與えた行爲は、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。
- 第九百二十九條後見人カ被後見人ニ代ハリテ營業若クハ第十二條第一項ニ揭ケタル行爲ヲ爲シ又ハ未成年者ノ之ヲ爲スコトニ同意スルニハ親族會ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但元本ノ領收ニ付テハ此限ニ在ラス
- 第二十二條第十七條の規定は、親族会員と被後見人又は準禁治產者との間にこれを準用する。
- 第二十三條新法施行前にされた親族会の決議に対する不服については、なお、旧法を適用する。
- 前項の規定によつて親族会の決議を取り消す判決が確定した場合でも、親族会であらたに決議をすることは、これを認めない。
- 第二十四條新法施行前に扶養に関してされた判決については、新法第八百八十條の規定を準用する。
- 第二十五條應急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する。
- 應急措置法施行前に家督相続が開始し、新法施行後に旧法によれば家督相続人を選定しなければならない場合には、その相続に関しては、新法を適用する。但し、その相続の開始が入夫婚姻の取消、入夫の離婚又は養子緣組の取消によるときは、その相続は、財產の相続に関しては開始しなかつたものとみなし、第二十八條の規定を準用する。
- 第二十六條應急措置法施行の際における戶主が婚姻又は養子緑組によつて他家から入つた者である場合には、その家の家附の継子は、新法施行後に開始する相続に関しては、嫡出である子と同一の権利議務を有する。
- 前項の戶主であつた者について應急措置法施行後新法施行前に相続が開始した場合には、前項の継子は、相続人に対して相続財產の一部の分配を請求することができる。この場合には、第二十七條第二項及び第三項の規定を準用する。
- 前二項の規定は、第一項の戶主であつた者が應急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は緣組の取消若しくは離緣によつて氏を改めた場合には、これを適用しない。
- 第二十七條第二十五條第二項本文の場合を除いて、日本國憲法公布の日以後に戶主の死亡による家督相続が開始した場合には、新法によれば共同相続人となるはずであつた者は、家督相続人に対して相続財產の一部の分配を請求することができる。
- 前項の規定による相続財產の分配について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求することができる。但し、新法施行の日から一年を経過したときは、この限りでない。
- 前項の場合には、家庭裁判所は、相続財產の狀態、分配を受ける者の員数及び資力、被相続人の生前行爲又は遺言によつて財產の分配を受けたかどうかその他一切の事情を考慮して、分配をさせるべきかどうか並びに分配の額及び方法を定める。
- 第二十八條應急措置法施行の際戶主であつた者が應急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は養子緣組の取消若しくは離緣によつて氏を改めた場合には、配偶者又は養親、若し配偶者又は養親がないときは新法によるその相続人は、その者に対し財產の一部の分配を請求することができる。この場合には、前條第二項及び第三項の規定を準用する。
- 第二十九條推定の家督相続人又は遺產相続人が旧法第九百七十五條第一項第一号又は第九百九十八條の規定によつて廃除されたときは、新法の適用については、新法第八百九十二條の規定によつて廃除されたものとみなす。
- 第九百七十五條法定ノ推定家督相續人ニ付キ左ノ事由アルトキハ被相續人ハ其推定家督相續人ノ廢除ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
- 一被相續人ニ對シテ虐待ヲ爲シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルコト
- 二疾病其他身體又ハ精神ノ狀況ニ因リ家政ヲ執ルニ堪ヘサルヘキコト
- 三家名ニ汚辱ヲ及ホスヘキ罪ニ因リテ刑ニ處セラレタルコト
- 四浪費者トシテ準禁治產ノ宣告ヲ受ケ改悛ノ望ナキコト
- 此他正當ノ事由アルトキハ被相續人ハ親族會ノ同意ヲ得テ其廢除ヲ請求スルコトヲ得
- 第九百九十八條遺留分ヲ有スル推定遺產相續人カ被相續人ニ對シテ虐待ヲ爲シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキハ被相續人ハ其推定遺產相續人ノ廢除ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
- 第三十條旧法第九百七十八條(旧法第千條において準用する場合を含む。)の規定によつて遺產の管理についてした処分は、相続が第二十五條第二項本文の規定によつて新法の適用を受ける場合には、これを新法第八百九十五條の規定によつてした処分とみなす。
- 第九百七十八條推定家督相續人ノ廢除又ハ其取消ノ請求アリタル後其裁判確定前ニ相續カ開始シタルトキハ裁判所ハ親族、利害關係人又ハ檢察官ノ請求ニ因リ戶主權ノ行使及ヒ遺產ノ管理ニ付キ必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得廢除ノ遺言アリタルトキ亦同シ
- 裁判所カ管理人ヲ選任シタル場合ニ於テハ第二十七條乃至第二十九條ノ規定ヲ準用ス
- 第二十七條前二條ノ規定ニ依リ家庭裁判所ニ於テ選任シタル管理人ハ其管理スヘキ財產ノ目錄ヲ調製スルコトヲ要ス但其費用ハ不在者ノ財產ヲ以テ之ヲ支辨ス
- 不在者ノ生死分明ナラサル場合ニ於テ利害關係人又ハ檢察官ノ請求アルトキハ家庭裁判所ハ不在者カ置キタル管理人ニモ前項ノ手續ヲ命スルコトヲ得
- 右ノ外總テ家庭裁判所カ不在者ノ財產ノ保存ニ必要ト認ムル處分ハ之ヲ管理人ニ命スルコトヲ得
- 第二十八條管理人カ第百三條ニ定メタル權限ヲ超ユル行爲ヲ必要トスルトキハ家庭裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ爲スコトヲ得不在者ノ生死分明ナラサル場合ニ於テ其管理人カ不在者ノ定メ置キタル權限ヲ超ユル行爲ヲ必要トスルトキ亦同シ
- 第百三條權限ノ定ナキ代理人ハ左ノ行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有ス
- 一保存行爲
- 二代理ノ目的タル物又ハ權利ノ性質ヲ變セサル範圍内ニ於テ其利用又ハ改良ヲ目的トスル行爲
- 第二十九條家庭裁判所ハ管理人ヲシテ財產ノ管理及ヒ返還ニ付キ相當ノ擔保ヲ供セシムルコトヲ得
- 家庭裁判所ハ管理人ト不在者トノ關係其他ノ事情ニ依リ不在者ノ財產中ヨリ相當ノ報酬ヲ管理人ニ與フルコトヲ得
- 第千條第九百七十六條及ヒ第九百七十八條ノ規定ハ推定遺產相續人ノ廢除及ヒ其取消ニ之ヲ準用ス
- 第三十一條應急措置法施行前に分家又は廃絶家再興のため贈與された財產は、新法第九百三條の規定の適用については、これを生計の資本として贈與された財產とみなす。
- 第三十二條新法第九百六條及び第九百七條の規定は、第二十五條第一項の規定によつて遺產相続に関し旧法を適用する場合にこれを準用する。
- 第三十三條新法施行前に旧法第千七十九條第一項の規定に從つてした遺言で、同條第二項の規定による確認を得ないものについては、新法第九百七十九條第二項及び第三項の規定を準用する。
- 新法施行前に海軍所属の艦船遭難の場合に旧法第千八十一條において準用する旧法第千七十九條第一項の規定に從つてした遺言で、同條第二項の規定による確認を得ないものについても、前項と同様である。
- 第千七十九條從軍中疾病、傷痍其他ノ事由ニ因リテ死亡ノ危急ニ迫リタル軍人及ヒ軍屬ハ證人二人以上ノ立會ヲ以テ口頭ニテ遺言ヲ爲スコトヲ得
- 前項ノ規定ニ從ヒテ爲シタル遺言ハ證人其趣旨ヲ筆記シテ之ニ署名、捺印シ且證人ノ一人又ハ利害關係人ヨリ遲滯ナク理事又ハ主理ニ請求シテ其確認ヲ得ルニ非サレハ其效ナシ
- 第千七十六條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
- 第千八十一條第千七十九條ノ規定ハ艦船遭難ノ場合ニ之ヲ準用ス但海軍ノ所屬ニ非サル船舶中ニ在ル者カ遺言ヲ爲シタル場合ニ於テハ其確認ハ之ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ要ス
附則昭和二十三年法律第二百六十号抄
- 第十條この法律は、昭和二十四年一月一日から施行する。但し、裁判所法第十四條の二、第五十六條の二、判事補の職権の特例等に関する法律第二條の二及び裁判所職員の定員に関する法律第六條の規定並びに裁判所法第十條、第六十三條第一項及び裁判所職員の定員に関する法律第四條を改正する規定は、この法律公布の日から施行する。
- 第十九條民法の一部を改正する法律(昭和二十二年法律第二百二十二号)附則第十四條第二項又は第二十七條第三項(同法附則第二十五條第二項但書、第二十六條第二項及び第二十八條において準用する場合を含む。)の規定によつて家事審判所が行うべき審判は、この法律施行後は、家庭裁判所が行う。
附則昭和二十四年法律第百十五号
- この法律は、公布の日昭和二十四年五月二十八日から施行する。
附則昭和二十四年法律第百四十一号抄
- 1この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。
附則昭和二十五年法律第百二十三号抄
- 1この法律は、公布の日昭和二十五年五月一日から施行する。
附則昭和三十三年法律第五号抄
- 施行期日
- 1この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令昭和三十三年政令第五十四号で定める日昭和三十三年七月一日から施行する。
- 経過規定
- 2この法律による改正後の遺失物法、水難救護法及び民法の規定は、この法律の施行の日前において拾得された遺失物及び漂流物又は沈没品でそれぞれまだ警察署長に差出されておらず、又は市町村長に引き渡されていないものについて適用し、この法律の施行の際現に警察署長に差し出されている遺失物及び市町村長に引き渡されている漂流物又は沈没品については、なお従前の例による。
附則昭和三十三年法律第六十二号抄
- 1この法律は、昭和三十四年一月一日から施行する。
附則昭和三十七年法律第四十号抄
- 施行期日
- 1この法律は、昭和三十七年七月一日から施行する。
- 経過規定
- 2この法律による改正後の民法は、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、従前の民法によつて生じた効力を妨げない。
附則昭和三十七年法律第六十九号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、昭和三十八年四月一日から施行する。
附則昭和三十八年法律第百二十六号
- この法律は、商業登記法の施行の日(昭和三十九年四月一日)から施行する。ただし、第七条中商法第二百十条第四号、第二百八十条ノ四第二項及び第四百九十八条第一項第九号の改正規定は、公布の日から施行する。
附則昭和三十九年法律第百号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約が日本国について効力を生ずる日昭和三十九年八月二日から施行する。
附則昭和四十一年法律第九十三号抄
- 施行期日
- 1この法律は、昭和四十一年七月一日から施行する。ただし、第一条(借地法第十二条の改正規定を除く。)並びに附則第二項、第三項及び第十項の規定は、この法律の公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
- 経過措置等
- 6この法律による改正後の規定は、各改正規定の施行前に生じた事項にも通用する。ただし、改正前の規定により生じた効力を妨げない。
附則昭和四十一年法律第百十一号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令昭和四十一年政令第三百八十号で定める日昭和四十一年十二月三十一日から施行する。
- 民法の一部改正に関する経過措置
- 第十七条この法律の施行前に執行を終えた職務に関して受け取つた書類についての執行吏の責任の消滅時効については、前条の規定による民法の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。この法律の施行前に原因たる事件が終了した場合における執行吏の職務に関する債権及びこの法律の施行前に原因たる事件中の各事項が終了した場合におけるその事項に関する債権についても、同様とする。
附則昭和四十六年法律第九十九号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、昭和四十七年四月一日から施行する。
- 経過措置の原則
- 第二条この法律による改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、別段の定めがある場合を除き、この法律の施行の際現に存する抵当権で根抵当であるもの(以下「旧根抵当権」という。)にも適用する。ただし、改正前の民法(以下「旧法」という。)の規定により生じた効力を妨げない。
- 新法の適用の制限
- 第三条旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないもの又は附記によらない極度額の増額の登記があるものについては、その極度額の変更、新法
第三百九十八条ノ四第三百九十八条の四の規定による担保すべき債権の範囲又は債務者の変更、新法第三百九十八条ノ十二第三百九十八条の十二の規定による根抵当権の譲渡、新法第三百九十八条ノ十三第三百九十八条の十三の規定による根抵当権の一部譲渡及び新法第三百九十八条ノ十四第一項ただし書第三百九十八条の十四第一項ただし書の規定による定めは、することができない。 - 2前項の規定は、同項に規定する旧根抵当権以外の旧根抵当権で、
民法旧法第三百七十五条第一項の規定による処分がされているものについて準用する。ただし、極度額の変更及び新法第三百九十八条ノ十二第二項第三百九十八条の十二第二項の規定による根抵当権の譲渡をすることは、妨げない。
- 極度額についての定めの変更
- 第四条旧根抵当権で、極度額についての定めが新法の規定に適合していないものについては、元本の確定前に限り、その定めを変更して新法の規定に適合するものとすることができる。この場合においては、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
- 附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権の分割
- 第五条附記によらない極度額の増額の登記がある旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を分割して増額に係る部分を新法の規定による独立の根抵当権とすることができる。この場合においては、旧根抵当権を目的とする権利は、当該増額に係る部分について消滅する。
- 2前項の規定による分割をする場合には、増額に係る部分を目的とする権利を有する者その他の利害の関係を有する者の承諾を得なければならない。
- 元本の確定すべき期日に関する経過措置
- 第六条この法律の施行の際旧根抵当権について現に存する担保すべき元本の確定すべき時期に関する定め又はその登記は、その定めにより元本が確定することとなる日をもつて新法
第三百九十八条ノ六第一項第三百九十八条の六第一項の期日とする定め又はその登記とみなす。ただし、その定めにより元本が確定することとなる日がこの法律の施行の日から起算して五年を経過する日より後であるときは、当該定め又はその登記は、当該五年を経過する日をもつて同項の期日とする定め又はその登記とみなす。
- 弁済による代位に関する経過措置
- 第七条この法律の施行前から引き続き旧根抵当権の担保すべき債務を弁済するについて正当な利益を有していた者が、この法律の施行後元本の確定前にその債務を弁済した場合における代位に関しては、なお従前の例による。
- 旧根抵当権の処分に関する経過措置
- 第八条この法律の施行前に元本の確定前の旧根抵当権についてされた
民法旧法第三百七十五条第一項の規定による処分に関しては、なお従前の例による。
- 同一の債権の担保として設定された旧根抵当権の分離
- 第九条同一の債権の担保として設定された数個の不動産の上の旧根抵当権については、元本の確定前に限り、根抵当権者及び根抵当権設定者の合意により、当該旧根抵当権を一の不動産について他の不動産から分離し、これらの不動産の間に、
民法新法第三百九十二条の規定の適用がないものとすることができる。ただし、後順位の抵当権者その他の利害の関係を有する者の承諾がないときは、この限りでない。 - 2前項の規定による分離は、新法
第三百九十八条ノ十六第三百九十八条の十六の規定の適用に関しては、根抵当権の設定とみなす。
- 元本の確定の時期に関する経過措置
- 第十条この法律の施行前に、新法
第三百九十八条ノ二十第一項第二号第三百九十八条の二十第一項第一号に規定する申立て、同項第三号同項第二号に規定する差押え、同項第四号同項第三号に規定する競売手続の開始若しくは差押え又は同項第五号同項第四号に規定する破産の宣告破産手続開始の決定があつた旧根抵当権で、担保すべき元本が確定していないものについては、この法律の施行の日にこれらの事由が生じたものとみなして、同項の規定を適用する。
- 旧根抵当権の消滅請求に関する経過措置
- 第十一条極度額についての定めが新法の規定に適合していない旧根抵当権については、その優先権の限度額を極度額とみなして、新法
第三百九十八条ノ二十二第三百九十八条の二十二の規定を適用する。
附則昭和五十一年法律第六十六号抄
- 施行期日
- 1この法律は、公布の日昭和五十一年六月十五日から施行する。ただし、第三条中戸籍法第十条、第十二条第二項、第四十八条第三項、第五十二条第一項、第百二十条、第百二十一条、第百二十二条及び第百二十四条の各改正規定並びに同法第十二条及び第百二十一条の次にそれぞれ一条を加える各改正規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
- 民法の一部改正に伴う経過措置
- 2この法律の施行前三月以内に離婚し、又は婚姻が取り消された場合における第一条の規定による改正後の民法第七百六十七条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同項中「離婚の日から三箇月以内」とあるのは、「民法等の一部を改正する法律(昭和五十一年法律第六十六号)の施行の日から三箇月以内」とする。
附則昭和五十四年法律第五号抄
- 施行期日
- 1この法律は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の施行の日(昭和五十五年十月一日)から施行する。
- 経過措置
- 2この法律の施行前に申し立てられた民事執行、企業担保権の実行及び破産の事件については、なお従前の例による。
附則昭和五十四年法律第六十八号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日昭和五十四年十二月二十日から起算して六月を経過した日から施行する。
- 法人の設立許可の取消し等に関する経過措置
- 第二条この法律による改正後の民法第七十一条及び民法施行法第二十三条第一項の規定は、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の当該規定によつて生じた効力を妨げない。
- 法人の解散の登記に関する経過措置
- 第三条この法律の施行前に主務官庁が設立許可を取り消し、又は解散を命じた法人の解散の登記に関しては、なお従前の例による。
- 罰則に関する経過措置
- 第四条この法律の施行前にした行為及び前条の規定により従前の例によることとされる事項に係るこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附則昭和五十五年法律第五十一号抄
- 施行期日
- 1この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。
- 民法の一部改正に伴う経過措置
- 2この法律の施行前に開始した相続に関しては、なお、第一条の規定による改正前の民法の規定を適用する。
附則昭和六十二年法律第百一号
- 施行期日
- 第一条この法律は、昭和六十三年一月一日から施行する。
- 民法の一部改正に伴う経過措置の原則
- 第二条改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、次条の規定による場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法の規定によつて生じた効力を妨げない。
- 縁組の取消しに関する経過措置
- 第三条新法第八百六条の二及び第八百六条の三の規定は、この法律の施行前にした縁組には適用しない。
- 離縁等の場合の氏に関する経過措置
- 第四条この法律の施行前三月以内に離縁をし、又は縁組が取り消された場合における新法第八百十六条第二項(新法第八百八条第二項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、新法第八百十六条第二項中「離縁の日から三箇月以内」とあるのは、「民法等の一部を改正する法律(昭和六十二年法律第百一号)の施行の日から三箇月以内」とする。
附則平成元年法律第二十七号抄
- 施行期日
- 1この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令平成元年政令第二百九十二号で定める日平成二年一月一日から施行する。
- 経過措置
- 2この法律の施行前に生じた事項については、なお従前の例による。ただし、この法律の施行の際現に継続する法律関係については、この法律の施行後の法律関係に限り、改正後の法例の規定を適用する。
附則平成元年法律第九十一号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令平成二年政令第二百八十三号で定める日平成三年一月一日から施行する。
附則平成二年法律第六十五号
- この法律は、商法等の一部を改正する法律の施行の日平成三年四月一日から施行する。
附則平成三年法律第七十九号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
- 五第六条から第二十一条まで、第二十五条及び第三十四条並びに附則第八条から第十三条までの規定公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令平成四年政令第百六十号で定める日平成四年五月二十日
附則平成八年法律第百十号抄
- この法律は、新民訴法の施行の日平成十年一月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則平成十一年法律第八十七号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則平成十一年法律第百四十九号
- 施行期日
- 第一条この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、第九百六十九条、第九百七十二条、第九百七十六条及び第九百七十九条の改正規定、第九百六十九条の次に一条を加える改正規定並びに次条の規定は、公布の日平成十一年十二月八日から起算して一月を経過した日から施行する。
- 民法の一部改正に伴う経過措置の原則
- 第二条この法律による改正後の民法(次条において「新法」という。)の規定は、次条第三項の規定による場合を除き、当該改正規定の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法(次条において「旧法」という。)の規定によって生じた効力を妨げない。
- 禁治産及び準禁治産の宣告等に関する経過措置
- 第三条旧法の規定による禁治産の宣告は新法の規定による後見開始の審判と、当該禁治産の宣告を受けた禁治産者並びにその後見人及び後見監督人は当該後見開始の審判を受けた成年被後見人並びにその成年後見人及び成年後見監督人とみなす。
- 2旧法の規定による心神耗弱を原因とする準禁治産の宣告は新法の規定による保佐開始の審判と、当該準禁治産の宣告を受けた準禁治産者及びその保佐人は当該保佐開始の審判を受けた被保佐人及びその保佐人とみなす。
- 3前項に規定する準禁治産者以外の準禁治産者及びその保佐人に関する民法の規定の適用については、第八百四十六条、第九百七十四条及び第千九条の改正規定を除き、なお従前の例による。
- 4旧法の規定による禁治産又は準禁治産の宣告の請求(この法律の施行前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、新法の規定による後見開始又は保佐開始の審判の請求とみなす。
附則平成十一年法律第二百二十五号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令平成十二年政令第八十五号で定める日平成十二年四月一日から施行する。
- 民法等の一部改正に伴う経過措置
- 第二十五条この法律の施行前に和議開始の申立てがあった場合又は当該申立てに基づきこの法律の施行前若しくは施行後に和議開始の決定があった場合においては、当該申立て又は決定に係る次の各号に掲げる法律の規定に定める事項に関する取扱いについては、この法律の附則の規定による改正後のこれらの規定にかかわらず、なお従前の例による。
- 一民法第三百九十八条ノ三第二項
附則平成十二年法律第九十一号抄
- 施行期日
- 1この法律は、商法等の一部を改正する法律(平成十二年法律第九十号)の施行の日平成十三年四月一日から施行する。
附則平成十三年法律第四十一号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、平成十四年四月一日から施行する。
附則平成十四年法律第一号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日平成十四年二月八日から施行する。
附則平成十五年法律第百九号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令平成十五年政令第五百十二号で定める日平成十六年四月一日から施行する。
- 民法の一部改正に伴う経過措置
- 第十三条前条の規定の施行前にされた婚姻の取消し及び養子縁組の取消しの請求については、なお従前の例による。
附則平成十五年法律第百三十四号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令平成十五年政令第五百九号で定める日平成十六年四月一日から施行する。
- 雇用関係の先取特権に関する経過措置
- 第二条第一条の規定による改正後の民法第三百六条第二号及び第三百八条の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に同号に掲げる原因により生じた債権及び同条の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権について適用し、施行日前に第一条の規定による改正前の民法(以下「旧民法」という。)第三百六条第二号に掲げる原因により生じた債権及び旧民法第三百八条の雇人給料(債務者の雇人が受けるべき最後の六箇月間の給料に限る。)として生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。
- 債権質の効力の発生に関する経過措置
- 第三条施行日前に債権をもってその目的とする質権の設定をする契約をした場合における当該質権の効力の発生については、第一条の規定による改正後の民法第三百六十三条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
- 滌除及び増価競売に関する経過措置
- 第四条施行日前に旧民法第三百八十三条の書面が同条に規定する債権者の全員に到達した場合における当該抵当不動産についての旧民法第三百七十八条の規定による滌除及び旧民法第三百八十四条に規定する増価競売については、第一条の規定による改正後の民法及び第三条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。
- 短期賃貸借に関する経過措置
- 第五条この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法第六百二条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。
- 根抵当権の元本の確定に関する経過措置
- 第六条施行日前に旧民法第三百九十八条ノ二十第一項第一号に掲げる場合に該当して同項の規定により確定した根抵当権の担保すべき元本については、なお従前の例による。
- 敷金の登記に関する経過措置
- 第七条第二条の規定による改正後の不動産登記法第百三十二条第一項の規定は、施行日前に登記された賃貸借の敷金については、適用しない。
附則平成十五年法律第百三十八号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令平成十五年政令第五百四十四号で定める日平成十六年三月一日から施行する。
附則平成十六年法律第七十六号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、破産法(平成十六年法律第七十五号。次条第八項並びに附則第三条第八項、第五条第八項、第十六項及び第二十一項、第八条第三項並びに第十三条において「新破産法」という。)の施行の日平成十七年一月一日から施行する。ただし、第四十八条の規定は行政書士法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百三十一号)の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。
- 民法の一部改正に伴う経過措置
- 第七条施行日前にされた破産の申立て又は施行日前に職権でされた破産の宣告に係る破産事件については、第六条の規定による改正後の民法第二百七十六条、第六百二十一条及び第六百四十二条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
附則平成十六年法律第百二十四号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、新不動産登記法の施行の日平成十七年三月七日から施行する。ただし、第三条のうち非訟事件手続法第百二十五条第一項の改正規定及び第十三条のうち抵当証券法第四十一条の改正規定中新不動産登記法第百二十七条の準用に係る部分は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)の施行の日(平成十七年四月一日)又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。
附則平成十六年法律第百四十七号抄
- 施行期日
- 第一条この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令平成十七年政令第三十六号で定める日平成十七年四月一日から施行する。
- 経過措置の原則
- 第二条この法律による改正後の民法(以下「新法」という。)の規定は、次条及び附則第四条(第三項及び第五項を除く。)の規定による場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、この法律による改正前の民法の規定によって生じた効力を妨げない。
- 保証契約の方式に関する経過措置
- 第三条新法第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、この法律の施行前に締結された保証契約については、適用しない。
- 貸金等根保証契約に関する経過措置
- 第四条新法第四百六十五条の二及び第四百六十五条の三(第二項を除く。)の規定は、この法律の施行前に締結された貸金等根保証契約(新法第四百六十五条の二第一項に規定する貸金等根保証契約をいう。以下同じ。)については、適用しない。
- 2この法律の施行前に締結された貸金等根保証契約であって元本確定期日(新法第四百六十五条の三第一項に規定する元本確定期日をいう。以下同じ。)の定めがあるもののうち次の各号に掲げるものの元本確定期日は、その定めにかかわらず、それぞれ当該各号に定める日とする。
- 一新法第四百六十五条の二第一項に規定する極度額(以下この条において単に「極度額」という。)の定めがない貸金等根保証契約であって、その元本確定期日がその定めによりこの法律の施行の日(以下この条において「施行日」という。)から起算して三年を経過する日より後の日と定められているもの施行日から起算して三年を経過する日
- 二極度額の定めがある貸金等根保証契約であって、その元本確定期日がその定めにより施行日から起算して五年を経過する日より後の日と定められているもの施行日から起算して五年を経過する日
- 3この法律の施行前に締結された貸金等根保証契約であって元本確定期日の定めがないものについての新法第四百六十五条の三第二項の規定の適用については、同項中「元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)」とあるのは「元本確定期日の定めがない場合」と、「その貸金等根保証契約の締結の日から三年」とあるのは「この法律の施行の日から起算して三年」とする。
- 4施行日以後にこの法律の施行前に締結された貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。
- 5この法律の施行前に新法第四百六十五条の四各号に掲げる場合に該当する事由が生じた貸金等根保証契約であって、その主たる債務の元本が確定していないものについては、施行日にその事由が生じたものとみなして、同条の規定を適用する。
- 6この法律の施行前に締結された新法第四百六十五条の五に規定する保証契約については、同条の規定は、適用しない。
- 7前項の保証契約の保証人は、新法第四百六十五条の五に規定する根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る当該主たる債務者の債務について、次の各号に掲げる区分に応じ、その元本確定期日がそれぞれ当該各号に定める日より後の日である場合においては、その元本確定期日がそれぞれ当該各号に定める日であるとしたならば当該主たる債務者が負担すべきこととなる額を限度として、その履行をする責任を負う。
- 一当該根保証契約において極度額の定めがない場合施行日から起算して三年を経過する日
- 二当該根保証契約において極度額の定めがある場合施行日から起算して五年を経過する日
- 8第六項の保証契約の保証人は、前項の根保証契約において元本確定期日の定めがない場合には、同項各号に掲げる区分に応じ、その元本確定期日がそれぞれ当該各号に定める日であるとしたならば同項の主たる債務者が負担すべきこととなる額を限度として、その履行をする責任を負う。